2019年9月17日付けで日刊薬業がそーせいグループの田村CEOのインタビュー記事を公開しました(記事「創薬ターゲットに困らない、王道は低分子 そーせい・田村CEO、新規モダリティは他社で」)。記事の内容はインタビュー記事のタイトル通り、低分子化合物に対する医薬品としての可能性についてでした。
田村CEOは「世界中で分子標的が枯渇して問題になった。標的がないから、製薬企業は新たなモダリティの獲得に動いた。抗体や抗体薬物複合体(ADC)、ペプチドなどだ。だが、医薬品の王道は低分子だ。Gタンパク質共役受容体(GPCR)には約400種類ある。その6割にはまだ手が付いていない」と指摘。「当社の強みは低分子創薬だ。新規モダリティは提携すればいい。(抜粋:日刊薬業記事 / 2019年9月17日)」と記事中で述べていますが、その低分子化合物が王道という理由については記述されていませんでした。
低分子化合物の特徴は、その分子量の少なさ故に人体のいたるところに入って行くことが出来ることです。また、いたるところに入って行くことが出来るということは、人体分布の範囲の広さにも繋がり、標的とする分子(標的分子)の数も多い傾向があります。
前回の記事「メディシノバ MN-166(イブジラスト)の導出時期に関する考察」にて血液脳関門を突破出来ることがイブジラストの特徴の一つと述べました。これもイブジラストが低分子化合物が故に実現できたことだと思います。
この様な強みが低分子化合物には備わっているため、田村CEOも「医薬品の王道は低分子だ」と述べたのではないでしょうか。
そしてもう一つ思いを巡らされたことが、そーせいグループとメディシノバが真逆のアプローチを取って薬を開発していることです。メディシノバの岩城社長はよく日本の診断医学と米国の治療医学を引き合いに出しますが、そーせいグループとメディシノバの立ち位置をよく表す言葉でもあります。
私は米国の治療医学を非常に理にかなった医療であり、メディシノバの開発方針も強く支持していますが、いざ創薬ベンチャーの世界に焦点を当てると診断医学がより勝っていると感じます。言わんとするところは、メディシノバの開発方針と治療医学のミスマッチがいたるところで起こり、その結果開発スピードが遅いのではないかということです。
おおよそ2013年に新生メディシノバとなって以来、開発は政府とのパートナーシップによる助成金を得ることで成り立って来ました(新生メディシノバについては「メディシノバ 株価から考察する経営活動の成果」を参照)。しかし現在は進行形多発性硬化症(PMS)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、そして変性性頸椎脊椎症(DCM)がフェーズ3に突入し、多くのパイプラインで今後は政府からの助成金では賄えない段階となってきます。
要は政府からではなく自前の資産(パイプラインや株式)を活用し、他の製薬企業への導出や資本提携などで開発費用を捻出する必要があるということです。その際、チャレンジをより応援する政府とは異なり、対象となる製薬企業はより確実性を求めてくると容易に想像出来ます。
そうなった場合、メディシノバの治療医学をベースとした方針ではその確実性を実証するデータが不足するケースが起こりやすくなるのではと感じました。故に、現在のPMS導出交渉の長期化に繋がっているのではないかということです。
今のメディシノバの開発方針は素晴らしいと思います。しかし、ひょっとしたら化合物のメカニズムに関する研究に今よりもう少し力を入れたほうが良い気もします。
<参考文献>
・そーせいグループの田村CEOのインタビュー(日刊薬業:創薬ターゲットに困らない、王道は低分子)
・診断医学と治療医学について(東洋経済:日本で世界を代表する製薬会社が育ちにくい訳)
<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com
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