2019年10月1日、米国の国立衛生研究所(NIH)はNIH傘下の国立加齢研究所(NIA)に対して今後5年間で$73,000,000以上の資金を提供することを発表しました。その資金はNIAの新しい2つの研究センターであるThe Open Drug Discovery Center for Alzheimer’s Disease (Open-AD)とThe Indiana University School of Medicine Alzheimer’s Disease Drug Discovery Center(IU-ADC)によってアルツハイマー病治療薬の開発促進のために活用される予定です。
この2つの研究センターの目的は同じですがそのアプローチは異なります。Open-ADはアルツハイマー病治療に有効な抗体や化学プローブ分子の研究に取り組み、IU-ADCは免疫系経路に焦点を当てた治療法の研究に取り組みます。
*化学プローブ分子:標的となる分子の動きを可視化するために蛍光や放射線などを発生する化学プローブ分子を組み込むことで組織、細胞、タンパク質などを観察することが出来る。
異なるアプローチを前提に研究機関を設立した経緯は、アルツハイマー病の治療手段が複数の手段の組み合わせにより成り立つと考えられているからです。アルツハイマー病に精通するLorenzo Refolo医師も以下の様にコメントしています。
・Lorenzo Refolo医師コメント(一部抜粋)
Ultimately, we need many candidate therapeutics that target multiple aspects of the disease in the drug development pipeline because there’s not likely to be a single cure for Alzheimer’s.
(和訳:突き詰めていくと、アルツハイマー病に対する単一の治療法はありそうもないため、同疾患の原因とされる複数のターゲットに対する多くの治療薬候補が必要です。)
続いてはNIHのこれらの発表とメディシノバのMN-166(イブジラスト)との関連性について、まずはメディシノバのビジネスモデルから見ていきます。
メディシノバは政府機関からの助成金による開発を頻繁に行います。進行形多発性硬化症適応フェーズ2b治験では国立神経疾患脳卒中研究所(NINDS)傘下のNeuroNEXTから資金提供を受けました。メタンフェタミン依存症適応フェーズ2治験ではNIH傘下の米国国立薬物濫用研究所(NIDA)から資金提供を受けました。さらに米国以外では変性性頸椎脊椎症(DCM)適応フェーズ2b/3治験ではイギリス国立疾病研究センター(NIHR)から資金提供を受けました。
これら以外にもアルコール依存症適応治験やオピオイド依存症適応治験に対しても政府機関からの助成金を得ています。
仮にMN-166に対して上記2つのセンターから共同研究の申し出があった場合(もしくはメディシノバからの申し出を受け入れた場合)、アルツハイマー病に対する開発を進めていくことと思われます。
アルツハイマー病に対するMN-166のポテンシャルについても見ていきます。MN-166は「MN-166とリルゾール併用療法でのALS(筋萎縮性側索硬化症)およびその他の神経変性疾患を適応とする特許承認のお知らせ」において、MN-166(リルゾール併用)のアルツハイマー病に対する特許を取得したことを公表しています。
特許を取得するためには疾患に対する明確な根拠が必要となるため、MN-166がアルツハイマー病の治療薬となる可能性は最低限示せています。
さらに掘り下げると、アルツハイマー病適応の治験ではアミロイドβペプチド(Aβ)がターゲットとして提案されています。そのAβ誘発による神経炎症やアポトーシス反応と呼ばれる神経死および記憶障害に対してイブジラストが効果を示したという研究があります。
結論として、MN-166にはアルツハイマー病治療薬としてのポテンシャルがあり、開発のネックとなっている資金源さえ得ることが出来ればメディシノバは同適応症に対する開発を進めていくと予想されます。そして今回のNIHの$73,000,000以上にも上る研究予算がメディシノバのMN-166にも振り分けられる可能性は低く無いと私は見ており、将来のMN-166パイプラインにアルツハイマー病がリストアップされると予想しています。
<参考文献>
・$73,000,000以上の資金提供について(NIH-funded translational research centers to speed, diversify Alzheimer’s drug discovery)
・MN-166のアルツハイマー病に対するポテンシャルついて(Pretreatment with antiasthmatic drug ibudilast ameliorates Aβ1–42-induced memory impairment and neurotoxicity in mice)
<調査銘柄の概要>
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