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2020年6月22日に大日本住友製薬により公表された『非定型抗精神病薬「LATUDA®」の用途特許に関する米国特許商標庁へのInter Partes Review の申立てについて』によって、米国におけるラツーダ(一般名:ルラシドン塩酸塩)の用途特許が無効になるリスクが露わになりました。
https://www.ds-pharma.co.jp/ir/news/pdf/ne20200622.1.pdf
ラツーダは北米で1,895億円(2019年度実績)の売上高を誇る大日本住友製薬の主力商品であり、同社の年間売上高4828億円(同年実績)のおおよそ40%を占めます。
ラツーダの米国での物質特許(US5532372A)は2019年1月2日に失効しています。
上記ラツーダの売上高が巨額であることからも分かるとおり、大日本住友製薬は同剤の権利保護に何よりも力を入れました。
結果として、同物質特許の本来の特許期間は2013年7月までだったのにも関わらず、5年間の特許期間の延長、ならびに小児適応追加による独占期間の半年間の延長承認も得たため、2019年1月2日までの物質特許による権利保護を実現した経緯があります。
さらに用途特許(US9815827B2)、および、製剤特許(US9907794B2)もそれぞれ2017年11月(失効:2024年2月)と2018年3月(失効:2026年5月)に成立しています。
さて、今回の用途特許無効リスクに該当する特許は上記記載の「用途特許(US9815827B2)」です。
実はこの「用途特許(US9815827B2)」は過去に16社から特許侵害という名の攻撃を受けています。
<用途特許(US9815827B2)に対する攻撃者>
アコード(Accord)、アムニール(Amneal)、オーロビンド(Aurobindo)、ドクター・レッディーズ(Dr. Reddy’s)、エムキュア(Emcure)、ファーストタイム(First Time)、インヴァジェン(InvaGen)、ジュービラント(Jubilant)、ルパン(Lupin)、エムエスエヌ(MSN)、パー(Par)、サン(SUN)、テヴァ(Teva)、トレント(Torren)、ワトソン(Watson)、ザイダス(Zydus)
*エムキュア、インヴァジェン、テヴァは物質特許(US5532372A)に対しても攻撃を仕掛けた。
そして2018年12月に全ての企業との間で和解成立という形で終えました。
なお、同和解案には該当する数社にのみ、同特許失効が2024年2月にも関わらず2023年2月20日以降にジェネリック品の販売を許可する条項が含まれました。
以上より、同用途特許(US9815827B2)の権利保護力には脆さが見られ、今回のスレイバック(Slayback)による米国特許商標庁への同特許無効申立ては、大日本住友製薬にとって大変厄介なイベントであると想定されます。
・スレイバック ホームページ
http://www.slayback-pharma.com/
なお、審理開始の有無は今年中には決定し、審理が開始された場合には1年以内に最終決定がなされます。
そして、仮に不服な場合は決定取消しを求め控訴することが可能であり、最終的な解決には数年の年月が必要です。
そのことからも、スレイバックが和解による和解金を目的としていることも否めません。
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