製薬・創薬業界『用途特許戦争(中外製薬 vs 沢井製薬)』

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ジェネリック医薬品や新型コロナウイルス感染症に対する治療薬開発の手段としてドラックリポジショニングが注目されている昨今、日本において一般製薬会社の中外製薬とジェネリック医薬会社の沢井製薬が、骨粗鬆症治療剤(活性型ビタミンD3製剤)エディロール(一般名:エルデカルシトール)に対する用途特許に関しての争いを始めました。

<骨粗鬆症>
骨強度の低下を特徴として、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患。

・エディロール®カプセルに関する特許権侵害訴訟の提起について(日付:5月29日 中外製薬)
https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20200529170000_985.html

「当社は、骨粗鬆症治療剤(活性型ビタミンD3製剤)エディロール®カプセル0.5µg、同0.75µg(一般名エルデカルシトール。以下、エディロールカプセル)について、同製品の後発医薬品の製造販売承認取得者である沢井製薬株式会社および日医工株式会社に対し、当社および大正製薬株式会社(以下、大正製薬)が保有する用途特許を侵害するとして、製造販売の差し止めを求め、東京地方裁判所に特許権侵害訴訟を提起するとともに、特許権侵害差止仮処分の申し立てを行いましたので、お知らせいたします。」

エディロールは、中外製薬が開発した活性型ビタミンD3誘導体であるエルデカルシトールを有効成分とする骨粗鬆症治療剤です。

同製品は日本国内において2011年1月21日に製造販売承認を取得し、最新の年次報告である2019年度では中外製薬および大正製薬を合わせて600億円以上を売り上げています。

エディロールの一般名であるエルデカルシトールは1985年に発明され2005年12月5日に物質特許切れを起こしている医薬品です。

そのため、同医薬品を用いた開発は自由に行うことが可能ですが、中外製薬の持つ同医薬品を用いた骨粗鬆症治療の用途特許は2030年4月28日までカバーしているため、本来であれば沢井製薬がこのタイミングでエディロールのジェネリック医薬品を販売することは不可能です。

では、何故こういったことが起こったのかを解説致します。

まず、骨粗鬆症治療薬として中外製薬が販売するエディロールですが、同製品を保護する用途特許はエルデカルシトールを用いた非外傷性前腕骨折抑制効果であり、骨粗鬆症治療を適応とする製品として承認を得ているものの、同特許は骨粗鬆症をカバーするものではありません(参照:特許5969161)。

<特許5969161請求の範囲>
・請求項1
エルデカルシトールを含んでなる非外傷性である前腕部骨折を抑制するための医薬組成物。

・請求項2
投与される対象が原発性骨粗鬆症患者である、請求項1に記載の組成物。

・請求項3
投与される対象が、若年者平均骨密度(YAM)の80%より低いか、またはTスコアがYAM値に対して−1SD以下である大腿部骨密度を有する、請求項1または2に記載の組成物。

・請求項4
エルデカルシトールが0.75μg/日の用量で経口投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。

そのため、エルデカルシトールカプセル「サワイ」として販売しているエルデカルシトールによる骨粗鬆症治療薬は、中外製薬が保有する特許5969161を侵害していることにはならないと沢井製薬は判断していると思います。

上記に加え、中外製薬はエルデカルシトールの製造法に関して二件の製造法特許を保有しています(特開2000-080074:ビタミンD誘導体の製造方法、および、特開平10-072432:ビタミンD誘導体結晶およびその製造方法)。

同二件の特許は「特開2000-080074:ビタミンD誘導体の製造方法」が2020年8月22日まで、「特開平10-072432:ビタミンD誘導体結晶およびその製造方法」が2022年6月12日まで特許が有効ですが、沢井製薬はおそらくこの製造法特許を侵害しない方法でエルデカルシトールを製造したと推測出来ます。

以上の通り、沢井製薬は中外製薬の特許を上手く躱しながらエルデカルシトールカプセル「サワイ」を販売するまでに至りました。

しかし、中外製薬の主張は異なります。

中外製薬は厳密な論点を公開してはおりませんが、沢井製薬(および日医工)に対して特許権侵害訴訟を提起しています。

同社はエディロールの医薬品インタビューフォームの中で「既存の活性型ビタミン D3 製剤を対照とした試験において椎体骨折及び非椎体骨折(3部位:大腿骨近位部、上腕骨、前腕骨)の発生頻度を低下させた。」と明記しています。

これが何を意味するかと言うと、エルデカルシトールによる骨粗鬆症治療の作用機序は、椎体骨折、大腿骨、上腕骨、前腕骨の非外傷性骨折リスクを減少させることで骨強度の低下を抑え込むということです。

そのため、沢井製薬のエルデカルシトールカプセル「サワイ」もジェネリック医薬品であることから同様の作用を発揮すると考えられ、その全体作用の一部である「前腕骨の非外傷性骨折リスク」を低減させるという作用が中外製薬の保有する特許5969161を侵害していると考えられ、これにより、中外製薬は沢井製薬を特許侵害で提訴していると推測出来ます。

しかし、同提訴において中外製薬にとって一つの懸念点が現時点で残っています。

沢井製薬は特許5969161に対し、2019年12月23日に特許無効審判を請求しています。

この請求がが通れば、中外製薬にとっては同提訴の大前提となる特許保有が無くなるため、沢井製薬に対する提訴によって製造販売の差し止めを請求することが出来なくなります。

本件に関する今後の注目点は、1.骨粗鬆症治療に対するエルデカルシトールの作用機序の一つとして明確に非外傷性前腕骨折リスクの低減が認められるかどうか、2.特許5969161に対する特許無効審判の結果の行方、の二点です。

中外製薬にとっては「1.作用機序の明確化」が認められ、「2.特許5969161」が有効であることが勝訴の条件です。

反対に、沢井製薬にとっては「1.作用機序の明確化」が認められたとしても、「2.特許5969161」が無効である場合や、「2.特許5969161」が有効であっても「1.作用機序の明確化」が認められなければ勝訴となります。

私の見解は特許侵害リスクを負ってでもエディロールのジェネリック医薬品エルデカルシトールカプセル「サワイ」を製造販売したため、沢井製薬の方に分があると言えそうです。

 

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