メディシノバ MN-166のALSに対するフェーズ2b/3治験の成功可能性(後編)

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メディシノバが開発を進めているMN-166(イブジラスト)のALSを適応とするフェーズ2b/3治験に対して記事「MN-166のALSに対するフェーズ2b/3治験の成功可能性(前編)」を投稿しました。

本記事では「MN-166のALSに対するフェーズ2b/3治験の成功可能性(後編)」と題し、定性的要因から成功可能性を探った前編に対し、後編では統計学的視点でその可能性を探ろうと思います。

まず、前回同様にMN-166のALSを適応とするフェーズ2b/3治験の内容を整理します。

 

<MN-166のALSフェーズ2b/3治験の概要>
・患者数:230名
・対象者:ALS発症18ヶ月(540日)以内かつALSFRS-Rスコア35以上(満点:48点)
・投与量:最大100mg(10mg ~ 50mgを1日2回)
・投与区分:(MN-166 + Riluzole)群 or(プラセボ + Riluzole)群
・投与期間:12ヶ月(+ 6ヶ月の非盲検期間)
・主要評価項目:治療前と比較する12ヶ月の治療後のALSFRS-Rスコア変化の平均値

そして同治験の成功可能性を占う上で重要な解析結果が図表1です。図表1は2018年7月10日に公表されたフェーズ2a治験に関する「MN-166 の ALS(筋萎縮性側索硬化症)を適応とする臨床治験でのサブグループ解析データ発表のお知らせ」で詳細を確認出来ます。

(図表1:ALS治験のMN-166とプラセボ群の解析結果 作成:SKブログ)

ASLフェーズ2b/3では治験グループを(発症18ヶ月以内の)早期ALS患者群としています。そのため、図表1のMN-166 + Riluzole投与群の早期ALSグループの安定・改善者の割合をどの様に向上させるか、そしてプラセボ + Riluzole投与群に対して統計的に有意な結果を出すかが求められます。

前編では早期ALSグループの安定・改善者の割合を向上させ得るポテンシャルについて述べました。本記事では安定・改善者の割合をどの程度高めれば統計的に有意な結果が出るのかについて解説します。

MN-166のALSフェーズ2b/3治験では230名の治験参加者を予定しており、MN-166群とプラセボ群の割当を1:1としてます。そのため、患者数115名ずつのデータを取ることが出来ます。

また、本記事では得られるデータの兼ね合いより、統計的有意な結果がより出難い条件を付ける代わりに、より単純なMN-166投与群の早期ALS患者の改善者グループを対象とした統計解析を行いました。

<統計解析の条件>
・検定統計量:t
・サンプル数(n):115
・仮想値:乱数(ズレあり)

(図表2:MN-166群の解析結果 *n = 115 作成:SKブログ)

図表2で得られた結果は、115名の母数において有意水準を達成するために必要なMN-166群を投与され改善された患者数の人数と割合です。

創薬の基準値は有意水準 = 0.05です。そのため、115名の内27名の改善者が出れば統計的に有意な結果が得られます。

全体の23.48%で治療効果が現れれば良いという事実に首を傾げる方もいるとは思いますが、統計解析ではサンプル数により感覚的に低い値でも有意な結果が得られることは往々にして起こります。

また、同条件下で図表1のサンプル数 = 20 で同解析を行った結果が図表3です。

(図表3:MN-166群の解析結果 *n = 20 作成:SKブログ)




図表3の結果では有意水準 = 0.05で統計的に有意な結果を出すためには20名中14名の改善者を得る必要があります。

この結果は図表1で表記されているP値と大きなズレがありますが、これは本解析の「統計的有意な結果がより出難い条件」による結果です。

結論として、MN-166のALSを適応とするフェーズ2b/3治験において、115名で構成されるMN-166 + Riluzole投与群のALSFRS-Rスコアの改善者を27名以上(全体の23.48%以上)得ることが同治験の主要評価項目を達成するための1つの基準と推測します。

また、その基準(23.48%)は図表1よりn=20で既に達成されており、かつ同治験の解析はペア解析になるため統計的有意な結果がより得られすくなると予想されます。

メディシノバの岩城社長の「既に完了していた ALS の第2相臨床試験のデータの更なる分析で、興味深い結果が得られたことを非常に嬉しく思います。この分析結果は、すでに第3相試験のデザインに組み込まれています。発症18 か月未満の ALS 患者さんをターゲットにすることにより、第3相試験の成功の可能性がはるかに高くなると考えています。」というコメントや、松田CMOによる「ALSフェーズ2b/3治験は絶対成功させる」というコメントは、この様な統計データが手元にあるが故にされていると思います。

MN-166のALSに対するフェーズ2b/3治験の成功可能性(前編)」において論じたポテンシャルや、本記事で得られた解析結果からも、同ALSフェーズ2b/3治験の主要評価項目を達成する可能性は非常に高いものと推測されます。

 

<参考文献>
MN-166の治験データ(MN-166のALSを適応とする臨床治験でのサブグループ解析データ発表のお知らせ)
ALSフェーズ2b/3治験の詳細(ClinicalTrials.gov)
ALS バイオマーカー治験の詳細(ClinicalTrials.gov)

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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