<投資家Q&A-035>メディシノバ 被買収の可能性

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第35回目の投資家Q&Aではメディシノバの被買収の可能性についてご質問頂きましたのでお答え致します。

 

<質問(抜粋・一部修正)>

はじめまして SKさん、ブログの一読者でメディシノバに投資している者です。いつもブログのアップデートありがとうございます。

さて以前、メディシノバが買収される可能性は少ない、その理由はあとで述べますという記事を読んだ覚えがあります。

その後その理由がブログに掲載された記憶がないのですがもし私の勘違い、見逃しでなければメディシノバが買収される可能性が少ない理由を改めて教えてください。

SKさんはレセプトスと比較されていましたが、私個人の願望としては導出をいつまでも待ったり導出されたとしても治験進捗にやきもきしたりしなければならないので、いっそのこと買収されてしまったほうがいいなぁと思います。

ご多用のところとは思いますが、よろしくお願い致します。

 

<回答>

メディシノバの買収可能性については「<投資家Q&A-011>メディシノバ 倒産リスクとTOB(株式公開買付)の可能性」においても記事として公開させて頂きました。

しかし当時は当ブログのデザインやUIに難があったため、該当記事の見落としに繋がってしまったかと思います。

まずはその点お詫び申し上げます。

また、同質問についてはアップデートも含め、本記事にて再度解説させて頂きます。

株式会社の買収は、その会社の株式を100%手に入れることで実現することは読者の皆様ご存知かと思います。

それ以外にも基本的な経営権の掌握には株式の1/2超過、(投票率事項を含まない)特殊事項も含む経営権の掌握には株式の2/3超過を手に入れることで実質的に買収が可能です。

メディシノバの場合は発行済株式総数が2020年1月16日時点で43,905,665株であるため、基本的な経営権の掌握には21,952,833株(1/2超過)、(投票率事項を含まない)特殊事項も含む経営権の掌握には29,270,444株(2/3超過)を手に入れれば実質的な買収となります。

しかし、実際の企業買収は上記のようにシンプルに行きません。

他の要因として真っ先に挙げられるのがストックオプションの存在です。

2020年1月16日時点でのストックオプション残高は(付与含む)8,000,493株分にあたります。

よって現時点で買収を考える場合、株式総数を51,906,158株と見込む必要があり、基本的な経営権の掌握には25,953,080株(1/2超過)、(投票率事項を含まない)特殊事項も含む経営権の掌握には34,604,106株(2/3超過)を手に入れれば実質的な買収となります。

その内、取締役と執行役の実質保有数は約8,350,000株(7,354,710株 + 2020年度ストックオプション付与約100万株)となり全体の約16%のため、ストックオプションの兼ね合いまでの条件下では、メディシノバの保有率2/3超過での実質的は買収は容易です。

しかし、条件は上記だけに留まりません。

米国に籍を置くメディシノバはデラウェア州法が適応とされており、さらにそれを踏まえた買収防衛策の取り組みを積極的に行っています。

 

<メディシノバの買収防衛策(参照:2018年度 有価証券報告書)>

・ 取締役会のメンバーの解任は、議決権の過半数の賛成投票によってのみ認められる。

・ 買収阻止または遅延を目的として、取締役会に*白紙委任型優先株式の裁量的発行を認めている。

・ 臨時株主総会を招集できる者が制限されている。

・ 取締役候補者の指名または株主総会の議案事項の提案について、事前通知の要件が定められている。

・ 株主の2/3の承認がない限り、株主が定款に一定の修正を加えることを禁じている。

・ 取締役のクラスを分け、任期満了の時期をずらしている。

・取締役会の事前承認を得た場合を除き、普通株式の15%以上を保有する実質株主との企業結合を3年間禁止している。

*白紙委任型優先株式:議決権、転換、配当金、その他の権利が規定されずに発行される優先株式。

 

非友好的な買収を仕掛けるM&A担当者の立場に立った場合、特に「取締役会の事前承認を得た場合を除き、普通株式の15%以上を保有する実質株主との企業結合を3年間禁止している」の項目が非常に厄介です。

これにより、企業結合が行えない3年間は別事業体として経営を行う必要があり、必要な株式を取得したとしても、メディシノバの経営権を掌握するためには取締役会を掌握する必要があります。

臨時株主総会を招集出来るのはジェフ・ヒマワン取締役会長と岩城社長(CEO)または取締役の過半数の賛成票による場合のため、取締役会を掌握するためには現取締役の解任を定時株主総会で行う必要があります。

しかし、メディシノバは取締役の任期満了の時期をクラス分け(Ⅰ〜Ⅲ)によりずらしているいるため、全ての取締役を解任するまでに最短で2年、策を講じなければ3年の期間を要します。

結局の所、メディシノバの株式を多量に取得したとしても経営掌握まで数年の期間を要するため、非友好的な買収は現実的な判断にはなりえません。

 

<参考文献>
デラウェア州法および発行済または未発行株式総数(2018年度 有価証券報告書)
取締役会について(メディシノバ 定款)

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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