ステムリム IPO調達額の大幅な引き下げと株価の低迷に関する考察

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再生誘導医薬の開発を目指しているステムリムは、2019年8月9日に東京証券取引所マザーズ市場に上場しました。

その際、IPO(新規株式公開)による調達額の大幅な引き下げ(手取り金額:約168億円 → 約100億円)や、それに伴う上場時の時価総額の大幅な縮小(想定:約1,500億円 → 約700億円)が話題に上がりました。

また、2019年12月31日現在、ステムリムの時価総額は約485億円と低空飛行を続けており、上場後5ヶ月経っても同社が想定する時価総額とは大きな隔たりがある状況です。

ステムリムが開発を目指している再生誘導医薬は、胚(受精卵)から培養してつくられる「ES細胞」や人工的に作製される「iPS細胞」に対し、最も医療への応用が進んでいる「体性幹細胞」に焦点を当てています。

この3つの幹細胞の説明は別の機会にすることにした上で、要点としてはステムリムは「ES細胞」や「iPS細胞」と同列に扱われる「体性幹細胞」に焦点を当てた再生医療に従事する創薬ベンチャーということです。

京都大学iPS細胞研究所 所長・教授の山中伸弥氏がノーベル賞を受賞して以来、日本では再生医療が非常に注目されています。それに合わせて、再生医療に関連する上場企業の株価は総じて高い傾向にあります(あった)。

このことがステムリムが強気なIPO価格(2,370〜3,730円/株)を設定した理由の一つに思われます。

さらに(これも詳細は別の機会に設けます)、ステムリムが開発を進めている再生誘導医薬は既存の再生医療とは一線を画すと主張しています。

端的に言うと、ステムリムの再生誘導医薬は既存の再生医療と比較して「より安全で、より効果的で、より安価である」ということです。

そのため、「話題性のある再生医療に従事し、かつ既存の再生医療技術を超越している」と自負するステムリムが強気のIPO価格を設定したことは理解出来ます。

では何故、投資家にその価格が受け入れられなかったのか。いくつか仮説を立ててみます。

 

<仮説1:低分子化合物薬の創薬ベンチャー>

ステムリムが開発を進める再生誘導医薬は、再生医療を実現するために投与する低分子化合物です。

ES細胞やiPS細胞の培養などの所謂「バイオテクノロジー」に対して、ステムリムは低分子化合物薬の創薬ベンチャーです。

投資家心理やメディアに対して派手さにかける同社のコンセプトが上値を押さえている可能性があります。

 

<仮説2:パイプラインの魅力不足>

2019年12月31日現在、ステムリムの臨床段階のパイプラインは計3つです(適応症:表皮水疱症、脳梗塞、心筋症)。さらにそのいずれもが、フェーズ2以下であり、投資家心理としては非常に物足りません(表皮水疱症に関しては希少疾患のためフェーズ2終了後に申請予定)。

そして、表裏水疱症は日本国内で約1,000人程の患者数ということで非常に市場規模が小さいということがわかります。

さらに、脳梗塞や虚⾎性⼼疾患(慢性期⾎性⼼疾患)の患者数に関しては16.7万⼈と77.9万⼈であり、患者数で考えると大きな市場規模が見込まれますが、同パイプラインの治療メカニズムでは果たしてその規模のシェアを大きく占められるかは疑問です。

例えば、サンバイオが開発を進めている脳梗塞や外傷性脳損傷を適応とする細胞医薬「SB623」のコンセプトは再生治療に該当しますが、ステムリムの同パイプラインのコンセプトはより再発予防治療に該当するからです。

結果として、同パイプラインの上市が達成されたとしても売上規模が小さいため、企業価値の大幅な上昇は難しいと判断された可能性があります。

 

<仮説3:再生誘導医薬への懐疑>

最も開発が進んでいる上記3パイプラインを構成するHMGB1ペプチドは、再生治療とは言いつつも、表裏水疱症のパイプラインでは表皮の再生、脳梗塞や心筋症のパイプラインでは傷ついた血管の線維化抑制と、世間がイメージする所謂「再生治療」とはズレがあります。

HMGB1ペプチドが再生誘導医薬というアプローチで再生治療として認識されるためには、今後控えている外傷性軟⾻損傷や外傷性脳損傷を適応とする治験で少なくともフェーズ2aで結果を出してからだと思います。

 

上記3つの仮説により、再生医療関連銘柄として大規模なIPO額を伴う上場には無理があったように思います。

しかし、適正な評価を受けていないという訳ではなく、むしろ臨床段階の現パイプラインの価値で考えると過大評価を受けている印象の方が強いです。

そのため市場規模が小さいとはいえ、今年結果が出る表裏水疱症を適応とするフェーズ2治験で主要評価項目を達成出来なかった場合は、再生誘導医薬に対する懐疑から大きな株価下落に陥ることが予想されます。

「ステムリムの現在の時価総額約485億円は低迷ではなく高水準である」ということが私の見解です。

 

<参考文献>
再生医療について(いま注目の再生医療とは、どんな医療?)
サンバイオ:SB623について(2016年1月期 決算説明会)

<調査銘柄の概要>
4599 : ステムリム
住所 : 大阪府茨木市彩都あさぎ7丁目7-15 彩都バイオインキュベータ3階
電話番号 : 072-648-7152(非通知発信は接続不可)
HP : https://stemrim.com/

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