製薬・創薬業界『ギリアドのレムデシビルの年間売上高77億ドルの行方(後編)』

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<当記事は2020年06月28日にSKメルマガで配信されたコンテンツです。>

<当記事はSKブログへの転載ルール「同内容がメールマガジンで配信された日にちから10日以降」に基づき掲載されます。>

 

前編で記述したとおり、レムデシビルのグローバル展開に対して非常に強かな経営戦略を推し進めるギリアドですが、本メルマガではレムデシビルの有効性に対する懸念点を述べます。

そして本メルマガで取り上げる論文および記事は、The New England Journal of Medicineに掲載された重症患者に関する「Remdesivir for 5 or 10 Days in Patients with Severe Covid-19」と、日経バイオテクに掲載された中等症患者に関する「米Gilead社がレムデシビルの一部結果を公表、中等度の新型コロナ患者で明暗」です。

・「Remdesivir for 5 or 10 Days in Patients with Severe Covid-19」
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2015301

『In total, 397 patients underwent randomization and began treatment (200 patients for 5 days and 197 for 10 days). The median duration of treatment was 5 days (interquartile range, 5 to 5) in the 5-day group and 9 days (interquartile range, 5 to 10) in the 10-day group. At baseline, patients randomly assigned to the 10-day group had significantly worse clinical status than those assigned to the 5-day group (P=0.02).』(NEJM)

 

・「米Gilead社がレムデシビルの一部結果を公表、中等度の新型コロナ患者で明暗」
https://bio.nikkeibp.co.jp/atcl/news/p1/20/06/02/07037/

『試験開始後11日目に重症度が2段階以上改善した被験者は、5日投与群で約70.2%(134例/191例)、10日投与群で約65.3%(126例/193例)、標準治療群で60.5%(121例/200例)で、「5日間投与群は、標準治療群と比較して、症状が改善した患者の割合が有意に高かった(p=0.017)」』(日経バイオテク)

 

今回の二つの臨床試験(ギリアド主導)は2020年6月1日に新型コロナウイルス感染症治療薬としてレムデシビルの緊急使用の承認を得る根拠となった治験(NIH主導)とは異なります。

ギリアドが実施している同治験は重症患者向け臨床試験(NCT04292899)が6000人、中等症患者向け臨床試験(NCT04292730)が1600人のエンロール数を予定しており現在も実施中です。

・重症患者向け治験(NCT04292899)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04292899

・中等症患者向け治験(NCT04292730)
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04292730

 



重症患者向け治験では、レムデシビルを5日間投与する群、10日間投与する群に分け、初回投与から14日目の重症度を7段階の尺度で評価しています。

中等症患者向け治験では、標準治療のみを受ける群、標準治療に上乗せしてレムデシビルを5日間投与する群、10日間投与する群の3群に分け、初回投与から11日目の重症度を上記同様に7段階の尺度で評価しています。

重症患者向け治験の中間解析のデータ数は397人です(5日間:200人、10日間:197人)。

そして結果は10日群での臨床状態は、5日群よりも有意に悪く(p = 0.02)、14日目に2段階以上の改善者は、5日群では64%、10日群では54%でした。

同結果はレムデシビル投与による治療期間が影響している訳ではなく、5日群に比べ10日群により多くの重篤患者が含まれていたことが影響してたと考察しています。

中等症患者向け治験の中間解析のデータ数は588人です(標準治療:200人、5日間:191人、10日間:193人)。

投与開始から11日目に重症度が2段階以上改善した患者は、標準群で60%、5日群で70%、10日群で65%でした。

同11日目に重症度が1段階以上改善した患者は、標準群で66%、5日群で76%、10日群で70%でした。

統計解析結果は標準治療群と比較して、5日群ではその改善に有意性があったが(2段階以上の改善:p = 0.017、1段階以上の改善:p = 0.026)、10日群では有意性は認められませんでした。

しかし、10日群においてもデータ数を増やしていくことで有意になるとギリアドは見込んでいます。

以上、二つの臨床試験中間結果が示すとおり、レムデシビルが新型コロナウイルス感染症に対して有効であることは認めなくてはなりません。

しかし、その効果に対しては標準群との改善数の差が10%程度であることや、(より不利な条件だったとギリアドは主張するものの)10日群における結果が5日群と比較して悪いことから、その効果に疑問が生じることもまた事実の様に感じます。

よって、ギリアドは(効果は薄いものの)統計的に有効であるという武器を最大限活用すべく、レムデシビル供給のグローバル戦略を推進し、売上の最大化を狙っているように感じてなりません。

効果が薄いものの唯一の承認治療薬であるために使わざるを得ないという意味では、ALS治療薬であるリルゾールに近いものを感じました。

 

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