メディシノバ MN-166(イブジラスト)のALSFRS-Rスコアの詳細(後編)

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前回の記事「メディシノバ MN-166(イブジラスト)のALSFRS-Rスコアの詳細(前編)」ではMN-166のALSフェーズ2b/3治験での条件下でのALSFRS-Rスコアと、同フェーズ1/2a治験のでプラセボ群に対する課題をあげました。

本記事ではその課題に対してメディシノバがいかに対処するのかを解説します。

前回の記事で指摘した課題は「プラセボ群(スコア増減:-3.35)がMN-166群(スコア増減:-4.67)より良い結果のため、MN-166の薬効に疑問が生じる」というものでした。

しかし、「Novel Composite Endpoint Extended Analysis During Extension of Ibudilast Phase 1b / 2a Clinical Trial Better Predicts Post-Wash-Out Surviva」からも理解できる通り、この課題は「MN-166が効いているかどうかではなく、MN-166が効かないALS患者群が存在している」ことが問題となっています。

そのため、メディシノバはMN-166のALS患者に対する効果を最大限に発揮できるよう、MN-166が効くALS患者をフェーズ2b/3治験により多く組み込むでこの課題に対処しています。

その対処方法は<MN-166のフェーズ2b/3治験のエンロール対象条件①>に加え、以下の条件も付け加えることです。

 

<MN-166のフェーズ2b/3治験のエンロール対象条件②>

・(既述①:スクリーニング時点でのALSFRS-Rスコアが35以上。)
・ALSの発症がスクリーニング時より18ヶ月以内。
・スクリーニング時から3ヶ月以上前かつ6ヶ月以内に評価されたALSFRS-Rスコアの記録が少なくとも1つはあること。

 

MN-166のフェーズ2b/3治験のエンロール対象条件に①と②を加えることによって、MN-166が効果を発揮することが出来ないと思われる患者群を治験から排除することが可能と考えられます。

ALSは発症から発覚まで最短でも約6ヶ月とされています。

そして、MN-166のALSフェーズ2b/3治験に該当する患者は、上記エンロール対象条件①②を踏まえるとALSの発症から9ヶ月~18ヶ月の期間中、かつALSFRS-Rスコアが35以上の患者となります。

(なお、ALSフェーズ1/2a治験ではALS発症から5年以内の患者、および非侵襲的人工呼吸器を着用しているALS患者に限っては発症から10年以内の患者を対象としていました。)

ALSには急速進行型・中間型・S字進行型・緩徐進行型の4種類の進行型があります(図表4)。

(図表4:ALS進行型 作成:SKブログ)

MN-166は進行型多発性硬化症に関しても、一次性進行型より二次性進行型に顕著に効果を発揮しました(詳しくは「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応の既存薬品とMN-166(イブジラスト)の優位性」を参照下さい)。

また、二次性進行型についても「再発を伴う」ものより、「再発を伴わない」ものにより効果が認められました。

これはMN-166が急性増悪に対しては効果が得られず、反対に、1年以上の継続した神経症状の悪化に対して効果を発揮すると考えられているからです。

ALSに関しても、急激な症状悪化に対しては効果が得られるかどうかは疑問です。

そのため、ALSの内、急速進行型やS字進行型のような急激な症状悪化を伴う進行型は排除すべきであり、それは「ALSの発症から9ヶ月~18ヶ月の期間中、かつALSFRS-Rスコアが35以上」の患者を対象とすることで、その大部分(急速進行型の患者群)を排除することが可能となります。

(急速進行型は9ヶ月~18ヶ月の期間には既にALSFRS-Rスコアが35以下のため。)

懸念点としては、S字進行型の患者群は急速進行型に比べると症状悪化は緩やかなものの、中間型と緩徐進行型に比べると悪化スピードが早いため、MN-166がしっかりと効くかどうかがあげられます。

なるべく発病から早い段階での治療開始が効果を得るには最善なものの、早すぎるとMN-166と相性の悪い急速進行型やS字進行型の患者群をエンロールしてしまうリスクが高まります。

そのため、「ALSの発症から9ヶ月~18ヶ月の期間中、かつALSFRS-Rスコアが35以上」はS字進行型の患者群をエンロールしてしまう可能性があるものの、最低限急速進行型の患者群を排除出来るため、落とし所としては適切に感じます。

結論として、MN-166のALSを適応とするフェーズ2b/3治験では、ALSの中間型と緩徐進行型の患者を主なターゲットとすることでMN-166に反応する患者数の割合を増やし、それに伴いALSFRS-Rスコアのプラセボ群に対する改善幅をさらに向上させることで、MN-166の効果の高さと統計的有意性を高めていくと推測出来ます。

MN-166に対して反応または改善したALS患者に関しては以下記事中にて詳しく述べていますので、MN-166のフェーズ2b/3治験に関しての理解を深めたい方はそちらも合わせて閲読下さい。

 

<MN-166に対して反応または改善したALS患者について>

メディシノバ MN-166のALSに対するフェーズ2b/3治験の成功可能性(前編)
メディシノバ MN-166のALSに対するフェーズ2b/3治験の成功可能性(後編)

 

<参考文献>
ALS進行型(高用量メチルコバラミン(E0302)筋注のALSに対する承認をめざした第Ⅲ相試験)
データ:エダラボン(KEGGデータベース)
データ:イブジラスト(Novel Composite Endpoint Extended Analysis During Extension of Ibudilast
Phase 1b / 2a Clinical Trial Better Predicts Post-Wash-Out Survival)

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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