2019年6月12日、メディシノバはJASDAQ市場への上場が廃止される可能性を示唆しました。といっても、同社のビジネスモデルを理解している方は少なくとも2年前からその可能性について考慮していたかと思います。
もちろん、メディシノバ経営陣もその事態を把握していたはずであり、その解決手段も含めた事業計画を立てていたはずです。
今回の報告に関する考察の前に、まずはメディシノバが上場しているJASDAQ市場(スタンダード)(以下、JASDAQと言う)とNASDAQ グローバル・マーケット(以下、NASDAQと言う)の2つの株式市場の上場基準と上場廃止基準について確認したいと思います。
JASDAQとNASDAQの上場基準・廃止基準に関して最も大きな違いは、前者が1つの基準しか無いことに比べ、後者は上場基準で4つ、廃止基準(維持基準と呼んだ方がより正確)で3つあります。
NASDAQは複数の基準のうち最低でも1つを満たしていれば良いので、JASDAQに比べ遥かに柔軟性が高いです。
それでは上場基準から見ていきましょう。
JASDAQ、NASDAQともに上場基準は縦の項目全てを満たしている必要があります。先に述べたとおり、JASDAQは1つの基準しか無いため、それを全て満たす必要があります。
反対にNASDAQは4つの中からどれか1つ基準を満たさば上場可能です。上場基準の中で分かりにくい項目は市場価値と時価総額の違いです。
この2つは前者が現時点での企業の価値、後者が将来の成長性まで考慮した企業の価値と考えて良いと思います。
上場による資金調達は企業の成長を前提にしているため、大抵の場合で時価総額 > 市場価値となります。
なお、メディシノバは日本株式市場への上場当時、経常利益はありませんでした。
しかし当時は大証ヘラクレス市場(以下、大証ヘラクレスと言う)が存在しており、同市場はNASDAQと同じく利益を上げていない状態での上場が可能でした。
その後2010年10月に旧JASDAQとの合併により大証ヘラクレスは消滅しました。
仮にメディシノバの日本への上場申請が2010年10月以降であれば日本上場は叶わなく、また、大証ヘラクレスが旧JASDAQと合併しなければ今回の上場廃止問題は生まれなかったはずです。
上場廃止基準はJASDAQとNASDAQで見方が異なります。
JASDAQは同基準の項目1つでも満たした段階で上場廃止となります。
反対にNASDAQは上場基準と同じ様に基準が複数あり、基準ごとの項目を全て上回っている状態を保っている限り上場廃止されることがありません。
これより、上場廃止基準と呼ぶよりも上場維持基準と呼ぶ方が適切かと思います。
今回の報告でメディシノバはJASDAQ上場廃止基準の「業績」項目に抵触していることを明確にしました。同社株の取引はJASDAQが約70%を占めます(2018年 JASDAQ:NASDAQ = 349,666株:161,418)。
この様な状況下でJASDAQ上場廃止が決まれば、NASDAQで取引が継続出来るといえ株価への負のリスクは甚大です。
メディシノバの資金調達手段は新株発行によるものが主です。その際は株価が非常に重要な要因となるため、創薬ベンチャーにとって株価を高価格帯に維持することは非常に重要度が高いです。
そのため、「なんとしてでも上場維持を図るだろう」というのが私の見解です。
<参考文献>
・上場基準について(経済産業省:上場バイオベンチャーをめぐる金融市場制度の課題整理)
<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
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