2019年9月4日に生理学研究所(NIPS)が公表したプレスリリース「イブジラストに抗がん剤の副作用(筋萎縮)軽減効果!~既承認薬の適応拡大に期待~」について特許や権利関係について複数のメディシノバ株主様からご質問を頂きました。
質問1:この事はメディシノバにとり吉or凶如何に捉えるべきや!!(抜粋)
質問2:メディシノバ社以外でのイブジラスト研究の場合、特許、権利関係はどのようになるとお考えですか?ご意見をお聞かせ下さい。(抜粋)
まず今回のNIPSの研究成果は差し引きで考えてメディシノバにとってプラスに働くと思われます。
医薬品化合物の開発は研究が進むに連れ、予算的にも患者数的にも大規模になっていきます。そのため対象化合物の確保が必要になります。
生成技術が問われるバイオ医薬品のように、イブジラストも低分子化合物の中では生成が難しいとされています。例えばジェネリック医薬品最大手 Teva社は日本で自社製のイブジラストによる気管支喘息・脳血管障害改善剤を販売していましたが、生産能力の問題で生産を中止した事例があります。
医薬品開発は将来的な上市を想定し、安定供給の可否を見据えて開発を進めます。また、イブジラストの安定供給が可能な元特許保有者である杏林製薬とはメディシノバが契約を結んでいます。
それらを示すように、元メディシノバ副社長の岡島様(現ステムリム社長)から以前直接伺った話ですが、イブジラストの研究は世界中で多く行われているものの、その多くは前臨床段階であり、臨床段階の研究は数えられる程度のようです。
そのため、特許切れの有無に関わらずメディシノバのイブジラストの「研究開発」に対する参入障壁は非常に高いと私は見込んでいます。
では、将来的なメディシノバのイブジラストの「上市薬品」に対してはどうでしょうか。これについて最も警戒しなくてはならない存在がイブジラストの安定供給が可能な杏林製薬です。
メディシノバは主に米国でイブジラストに関する特許を保有しています(詳しくは「メディシノバ イブジラストに対する進行型多発性硬化症適応の特許戦略」)。それにより、杏林製薬とはwin-winの関係を築くことが出来ています。
しかしメディシノバの特許が切れた場合、杏林製薬にとってはメディシノバとの関係性を見直す良い機会となり得ます。もちろん、メディシノバ経営陣もそれは理解しているはずなので上手く交渉を続けて行くとは思うのですが、投資家としてはメディシノバ経営陣に対するそこの判断が大きく問われることとなるはずです。
以上より、NIPSが公表したプレスリリース「イブジラストに抗がん剤の副作用(筋萎縮)軽減効果!~既承認薬の適応拡大に期待~」はメディシノバにとって差し引きプラスに働くものの、この研究は前臨床段階のもののためメディシノバの価値を上げるには影響としてほとんどないと言えます。
またメディシノバ以外のイブジラスト研究は、安定供給の実現が可能であり、そして特許戦略に関わる莫大なデータを保有する杏林製薬とメディシノバが契約を結んでいるため、その参入障壁は非常に高いと見込んでいます。
しかし将来的には杏林製薬が最大のリスクと化する可能性が大いにあるため、少なくともイブジラストの進行形多発性硬化症に関する特許が切れる10年後(延長含まず)はそのリスクをしっかりと把握する必要があります。
<調査銘柄の概要>
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