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2020年5月6日、ロイター通信は「ギリアド、レムデシビルの世界供給拡充へ企業や国際機関と協議」の題目で、ギリアドのCovid-19治療薬であるレムデシビルのグローバル戦略に関する内容を報道しました。
・ロイター通信『ギリアド、レムデシビルの世界供給拡充へ企業や国際機関と協議』
https://is.gd/rWbpSr
同記事ではギリアドがヨーロッパ、アジア、そして発展途上国向けにレムデシビルを生産するため、製薬会社や化学メーカーと協議に入っていると報じています。
ここで注目するべき点は、その協議における契約内容の期限が少なくとも2022年末までということで、短い期間でのパートナーシップをギリアドが考えているということです。
本来、製薬会社が医薬品を生産するためのパートナー選定では長期間における契約が前提となります。
これは医薬品の製造方法に纏わる技術や特許の保護を前提としながらも、サプライチェーンなど物流面においても最適化を進めていく必要があるからです。
そのため、2022年末までという短期間の契約を目指すことは、ギリアドやその契約先となる相手にとっても好ましいものではありません。
よって、ギリアドが同内容での契約締結を目指している理由を考える必要があります。
世界で猛威を振るう新型コロナウイルスですが、読者の皆様もご存知の通り、その治療薬は現在レムデシビルのみです。
それ故に世界中がレムデシビルを求めている状況ですが、その薬価に対する不安もあり、特に中国とインドでは知的財産権の考えを覆す主張がなされています。
<中国とインドの主張>
中国:ギリアドが保有するレムデシビルを中国科学院武漢病毒研究所が中国において特許申請(申請日:2020年1月21日)。
インド:ギリアドに対し、レムデシビルの特許権を放棄するよう求める。
上記のような倫理的な問題に対処するため、ギリアドは2020年末までに約14万人分(約150万回分)のレムデシビルを世界で無償提供すると発表しています。
・ブルームバーグ『ギリアドがレムデシビル寄付-新型コロナ患者14万人の治療に使える量』
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-04-05/Q8ALQQDWX2PU01
2022年末までの短期間契約による生産活動、そして、14万人分にも及ぶレムデシビルの無償提供から、ギリアドの狙いは倫理的な問題をクリアしつつ、世界における新型コロナウイルス感染症の治療法として、レムデシビルを第一選択として早急に確立することにあると推測します。
こうすることで、様々な国が新たな治療法を発掘したとしても、治療効果が顕著に向上しない限りレムデシビルでの治療法に取って代わることは難しくなります。
日本では富士フィルムのアビガンが5月中にも承認されるとの報道が出ていますが、どうもレムデシビルの承認の方が早くなりそうなため、私はレムデシビルとアビガンの治療効果は同程度と考えていることもあり、日本でもレムデシビル優勢アビガン劣勢という構図が出来上がると予想しています。
以上より、レムデシビルの緊急使用承認を世界で最も早く得たギリアドが、金か命かという倫理的な問題にも上手く対処しつつ、世界中でレムデシビルを新型コロナウイルス感染症治療薬の第一選択と確立していくその動きはとても迅速かつ賢明です。
新型コロナウイルスに対する、ワクチン、抗ウイルス薬、疾患治療薬の大きく三種類の医薬品分類のうち、抗ウイルス薬はギリアドに抑えられたと考え、それを前提に今後はワクチンと疾患治療薬の二種類の開発動向に注目していく必要があります。
当メルマガのご購読者であれば、その効果はさておき副作用の観点からもメディシノバのMN-166(イブジラスト)が新型コロナウイルス感染症によるARDS治療薬の第一候補になると期待していると思います。
しかし、重篤な副作用として感染症が上げられているロシュのアクテムラ(トシリズマブ)でさえ、レムデシビルとの併用が可能であればその感染症リスクを激減することが出来るかもしれません。
そのことにより、ギリアドの迅速なグローバル戦略の展開がMN-166の優位性に対して影響を与える可能性も考える必要が生まれました。
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