製薬・創薬業界『ロシュのアクテムラによるCovid-19性重篤肺炎フェーズ3治験の結果について – メディシノバのMN-166の可能性を添えて -』

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ロシュは2020年7月29日、アクテムラ(一般名:トシリズマブ)によるCovid-19性重篤肺炎フェーズ3治験の主要項目の結果を発表しました。

・Roche provides an update on the phase III COVACTA trial of Actemra/RoActemra in hospitalised patients with severe COVID-19 associated pneumonia

https://www.roche.com/investors/updates/inv-update-2020-07-29.htm

同発表においてロシュは、アクテムラが主要項目である「Covid-19による重篤肺炎患者の症状の改善」に対して統計的に有意な結果が得られなかったと明言しました。

また、副次評価項目として「4週目の死亡率」に対してもアクテムラはポジティブな結果は得られませんでした。

結論として、IL-6受容体阻害薬であるアクテムラはCovid-19性重篤肺炎に対しての治療効果は得られなかったとまとめることが出来ます。

分泌物であるIL-6と常在物であるIL-6受容体の結合があって初めて炎症作用が起きることから、アクテムラの同疾患に対する期待作用は分泌物であるIL-6に焦点を当てるのではなく、IL-6の受容体の機能を奪うことでIL-6との結合を抑制し、肺の炎症を抑制するという流れです。

メディシノバのMN-166(一般名:イブジラスト)はIL-6の分泌量を抑制することで炎症作用を抑制しますが、アクテムラはIL-6の分泌量に関わらず、IL-6の結合を阻害することで炎症作用をそもそもなかったことにします。

そのため、アクテムラのIL-6による抗炎症作用は非常に強力なものであり、重篤肺炎に対しても期待が持てました。

しかし、前述した通りアクテムラはCovid-19性重篤肺炎に対しての治療効果は得られませんでした。

考えられる理由はいくつかあります。

まず、Covid-19による重篤肺炎の炎症作用はIL-6以外の要因も上げられることです。

同疾患ではIL-6以外にも、腫瘍壊死作用を有するサイトカインの「TNF-α」、免疫・炎症を制御するサイトカインの「IL-1β」、疫調節や炎症プロセスに関与するサイトカインの「MCP-1」などが炎症因子として取り上げられます。

アクテムラはIL-6による炎症作用は抑制出来ますが、その他においては作用しないため、重篤肺炎の治療効果が得られなかった可能性があります。

続いて、Covid-19からの炎症ダメージが炎症抑制を上回ったことが考えられます。

炎症性サイトカインは炎症と免疫の両方の役割を持つことがあります。

そのため、炎症性サイトカイン受容体の阻害剤では免疫も過度に抑制してしまうことに繋がり、感染症に対して非常に弱い状態になってしまいます。

Covid-19のような感染力の強いウイルスの場合、この弱点が露呈してしまうことでCovid-19からのダメージが予想以上に身体に出てしまった可能性があります。

また、アクテムラの場合、免疫反応を再開させるために投与を中断することも危険です。

これはIL-6が約6ヶ月間血中に留まることで、投与中断によって血中に溜まったIL-6がIL-6受容体と過度に結合することで、炎症作用が増幅してしまうことが理由です。

結果として、アクテムラの抗炎症作用を上回るCovid-19による炎症作用が起こってしまったことが考えられます。

MN-166の場合はIL-6の分泌量を減らす作用のため、過度な免疫抑制は働きません。

そのため、感染症患者に対しても問題無く投与することが可能であり、免疫作用と抗炎症作用の両立が可能です。

 

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