メディシノバ MN-166(イブジラスト)の導出先とその方法

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メディシノバのジャスダック上場猶予期間も残すところ4ヶ月と少しになりました。同社も公言しているように、上場維持のためにはMN-166(イブジラスト)の導出による契約一時金の受領が必須となります。

MN-166の導出に関してはメディシノバがここ数年「メガファーマを含む複数の企業と交渉を続けている」と言い続けていますが、MN-166のポテンシャル(パイプラインの数と進捗度とその市場規模)を考えるとメガファーマもしくはその子会社への導出が現実的ではないでしょうか。

さて、今回の記事では世界の製薬企業売上高TOP5(2018年)に絞った上でMN-166の導出先とその方法を予想してみようと思います。

2018年の売上高TOP5は上から順にRoche(スイス)、Pfizer(アメリカ)、Novartis(スイス)、Merck/MSD(アメリカ)、Johnson & Johnson(アメリカ)となっていて、その5社の売上高、当期純利益、研究開発費を図表1,2にまとめました。

(図表1:世界の製薬企業売上高TOP5 作成:SKブログ)
(図表2:世界の製薬企業売上高TOP5 – データ 作成:SKブログ)

TOP5は売上高もさることながら、研究開発に約100億ドル(約1兆円)と莫大な費用を投じていることが分かります。そのため、どの企業にとってもMN-166を導入する金銭的ハードルは高くはないと感じます。

続いてMN-166とTOP5が保有する医薬品またはパイプラインの非競合性を確認します(図表3)。非競合性は解釈により意味合いが異なることがありますが、ここではMN-166と競合関係に無い状態を指します。

(図表3:MN-166との非競合性 作成:SKブログ)

TOP5の内3社がMN-166と競合関係にある医薬品またはパイプラインを保有しています。特にRocheはPPMSとALSが非競合性に無いため、仮にMN-166が同適応症で上市した場合には多大な損失を被ると予想出来ます。

なお、MN-166とPPMSやSPMSとの非競合性については「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応の既存薬品とMN-166(イブジラスト)の優位性」と「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応のMN-166フェーズ3治験について+導出額の推定」を参照してください。

ここまではMN-166を金銭的に導入可能な企業と、MN-166のポテンシャルに対する導入可能な企業の医薬品やパイプラインの非競合性について考察しました。




上記2つの観点ではRocheこそがMN-166を導入すべき企業と感じています。

しかしベンチャー企業の創業社長は強い理念や自己実現欲を持った方が多いです。メディシノバの岩城社長も厳密には創業社長ではありませんが、今までの経営活動を通して非常に自己実現欲(特に経営方針や開発方針に関して)の強い方という印象があります。

そのため、MN-166を導出するにしても将来的な利益享受の権利は与えるが、開発方針の議決権まで与えることはしないように思います。

要するにMN-166の導出契約に対するメディシノバの意向は、「MN-166の開発を自社主導で行うため、現経営陣の経営権を維持する範囲での資本提携を前提とした導出契約」を望んでいるのではないでしょうか。

では、そのメディシノバの意向が現実的かどうか、TOP5の過去の事例を見ていきます(図表4)。

(図表4:売上高TOP5製薬企業の買収実績 作成:SKブログ)

売上高TOP5の製薬企業はスイス企業(Roche、Novartis)とアメリカ企業(Pfizer、Merck、Johnson&Johnson)で構成されていますが、スイス企業はより買収先/提携先に対して自由度を与えているように思えます。反対にアメリカ企業はPfizerを筆頭に100%買収が主要な方法となっています。

メディシノバの経営陣の立場だとスイス企業との方が相性が良いと感じます。特にRocheは100%買収前のGenentechの経営陣や中外製薬の経営陣との間に良好な関係を築き、提携時点においては経営権を奪うようなことはしていません。

また、Rocheの子会社となった中外製薬はメディシノバと同じ創薬ベンチャーであるオンコリスバイオファーマの化合物「テロメライシン(OBP-301)」に対して資本提携を交えた導入契約を締結した実績もあります。

以上より、売上高TOP5の製薬企業であれば金銭的にMN-166を導入することは可能ですが、MN-166が上市した場合の非競合性や経営方針の親和性を考慮すると、「RocheこそがMN-166を導入すべきであり、メディシノバはRocheにこそ導出すべきです」。

さらに「資本提携を交えた導出契約にすることでメディシノバは自社主導によるMN-166の開発を進めることが可能になる」というのが私の意見です。

 

<参考文献>
・Roche(決算書 / パイプライン
・Pfizer(決算書 / パイプライン
・Novartis(決算書 / パイプライン
・Merck(決算書 / パイプライン
・Johnson&Johnson(決算書 / パイプライン

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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