メディシノバ/製薬・創薬業界『6種類のワクチンの解説(前編:遺伝子系ワクチン)』

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<当記事は2020年07月29日にSKメルマガで配信されたコンテンツです。>

<当記事はSKブログへの転載ルール「同内容がメールマガジンで配信された日にちから10日以降」に基づき掲載されます。>

 

当配信ではワクチンの知識として抑えておくべきことを解説します。

2020年7月28日のアドホック配信「メディシノバ『Covid-19ワクチン:アンジェスのDNAワクチンに勝るメディシノバのベクターワクチン』」でも述べたように、ワクチンは対象のウイルスに対する免疫反応を人体にもたらすことが目的です。

人体の免疫反応には「液性免疫」と「細胞免疫」の2つの免疫が存在し、血液中の抗体によってウイルスを排除する免疫を「液性免疫」、免疫細胞(キラーT細胞)によってウイルスを排除する免疫を「細胞免疫」と呼びます。

そしてワクチンには「液性免疫」と「細胞免疫」の両方の作用をもたらす遺伝子系ワクチンと、「液性免疫」のみの作用をもたらすタンパク質系ワクチンの2つに区分されます。

季節性インフルエンザやB型肝炎のワクチンをはじめ、世に流通するほとんどのワクチンがタンパク質系ワクチンです。

Covid-19によりメディシノバのウイルスベクターワクチンやアンジェスのDNAワクチン、モデルナのmRNAワクチンなどの言葉がメディアでも飛び交っていますが、これらは全て遺伝子系ワクチンであり、タンパク質系ワクチンに比べると歴史も実績も浅く、新世代のワクチンと言えます。

そして現状では上記3種類の遺伝子系ワクチンに加え、3種類のタンパク質系ワクチンが存在します(図表1)。

(図表1:6種のワクチ 作成:SKブログ)

遺伝子系ワクチンの作用は対象となるウイルスの何らかの遺伝子(またはそれに関連するもの)を投与物に導入し、人体の細胞内へと送り込むことで免疫作用をもたらします。

そして作用の注目すべき点は(1)細胞内へ遺伝子を届けられるかどうか(2)人体へ免疫をもたらせるかどうか、の2点です。

「(1)細胞内へ遺伝子を届けられるかどうか」について、比較的シンプルな作用がウイルスベクターワクチンです。

同ワクチンはウイルスに遺伝子を導入することで細胞まで遺伝子を送り届けます。

mRNAワクチンとDNAワクチンは上下関係にあり、DNAワクチンの進化系がmRNAワクチンと解釈して下さい。

ウイルスベクターワクチンが遺伝子をそのまま細胞内まで送り届けるのに対し、mRNAとDNAワクチンは細胞内において遺伝子に変化する核を投与物に導入します。

mRNAワクチンの投与物は化学物質ですが、DNAワクチンは核であるDNAをそのまま投与します。

細胞内に送り届けられた核はそこで遺伝子へと変わる必要があります。

また、mRNAワクチンは投与から細胞内まで1プロセスを前提としていますが、DNAワクチンでは2プロセスが前提です(イメージとしては「投与→細胞外、そして、細胞外→細胞内」)。

「(2)人体へ免疫をもたらせるかどうか」については、導入した遺伝子(またはそれに関連するもの)の能力によります。

そのため、上記3つのワクチンの種類の中でどれが良いとは一概には言えません。

しかし、作用としてはシンプルなウイルスベクターワクチンがその能力が高いです。

なぜなら、遺伝子をそのまま導入しているからです。

mRNAワクチンとDNAワクチンでは遺伝子を直接導入しません。

あくまで細胞内で遺伝子に変化する核を導入しているため、細胞内でしっかりと目標とする遺伝子へと変化するかどうかが肝です。

想像に容易いように、それを確実に実行することは非常に難しく、特に2プロセスが必要なDNAワクチンではそのことが特に問題となります。

以上を踏まえ、各ワクチンのメリット・デメリットを述べます。

ウイルスベクターワクチンは細胞内へ遺伝子を届ける能力と、遺伝子を直接届けることから人体へ免疫を持たせる能力が非常に高いです。

しかし、投与物がウイルスであることからも、投与ウイルスに対する免疫が人体へ持たされ、投与できる回数が基本的に1度のみとなります。

遺伝子を改良したとしても同じ投与ウイルスに導入することは出来ないため、失敗が許されません。

DNAワクチンは前述した3つのワクチンの中で最も期待値が低いワクチンです。

細胞内へ遺伝子を届けることも、人体へ免疫をもたらすことも苦手です。

しかし、DNAワクチンは遺伝子系ワクチンの基礎的な考え方に基づくため、生産が比較的単純です。

よって、大規模治験や承認後の流通の観点では非常に優れたワクチンです。

また、導入物がウイルスではないため複数回投与も可能です。

mRNAワクチンはDNAワクチンにウイルスベクターワクチンの理論を上手く取り入れたワクチンです。

導入物に化学物質を用いることで、ウイルスベクターの弱点である投与回数の上限を克服しました。

また、DNAワクチンのデメリットである細胞内へ核を届けることの難点を同化学物質により解決を試み、ウイルスベクターワクチンと同じプロセスで細胞内へ核を届けることが可能となりました。

しかし、ウイルスではなく化学物質のため、細胞内へ侵入する能力はウイルスベクターに比べて劣り、細胞内へ届ける導入物が核であることから、DNAワクチンと同様に目標とする遺伝子へ核が変化するかどうかのリスクが付きまといます。

上記3種類のワクチンではウイルスベクターワクチンが唯一承認を得た実績があります。

それも踏まえると、やはりウイルスベクターワクチンが遺伝子系ワクチンの雄であると言えるのではないでしょうか。

 
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