<当記事は2020年4月28日にSKメルマガで配信されたコンテンツです。>
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新型コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの効果に関して、多数の類似記事が報じられるも、本配信ではニューズウィーク(ロイター通信)が報じた記事「米政府の新型コロナウイルス治療薬治験、5月半ばに暫定結果の可能性」を取り上げます。
レムデシビルの薬効に対して、WHO(世界保健機関)が誤って公表した報告書に基づき、フィナンシャル・タイムズが「レムデシビルの新型コロナウイルスに対する治験失敗」と報道したため世界中が一同騒然となりました。
しかしギリアドはWHOの報告書に対して不適切に意義づけされていると反論しており、対象患者の規模が小さく、統計的に重要性のある結論がとれないと説明しています。
なお、ファイナンシャルプランナー・タイムズが報じた内容は「中国で実施していたレムデシビルの無作為抽出による初期臨床試験において、症状の改善も血液中の病原体減少も示されなかった」とするものです。
兎にも角にもレムデシビルの薬効に対する治験としては、ギリアドが実施している2つのフェーズ3治験や、NIAID(米国立アレルギー感染症研究所)が実施しているフェーズ3治験が直近で最も信頼性の高いデータが得られるものです。
そしてそのエンロール数は、ギリアドの重症患者を対象とした治験が6,000人、同じく中等症を対象とした治験が1,600人、さらにNIAIDの治験では新型頃内ウルス感染者全体で800人を対象としています。
ギリアドの治験結果およびNIAIDの治験の同暫定試験結果が5月には明らかになると報じられていることから、レムデシビルの治験が失敗と報じたWHOの面子は丸潰れです。
さて、本題としてレムデシビルが新型コロナウイルス感染症に対して効くかどうかです。
ギリアドの治験では一定期間(重症患者は14日間、中等症患者は11日間)のレムデシビル投与によって、症状のスコアが改善するかどうかを見極めることを目的としています。
同スコアは以下の通りです。
<症状のスコア>
1.死亡患者
2.ECMOまたは人工呼吸器が必要な入院患者。
3.非侵襲的換気法または高流量酸素装置が必要な入院患者。
4.低流量酸素装置が必要な入院患者。
5.酸素装置を必要としないが、継続的な治療が必要な患者。
6.補充酸素も継続的な治療も必要とはしない入院患者。
7.退院患者。
続いて、NIAIDの治験はレムデシビル投与によって、入院の期間や人工呼吸器の必要性、生存率などのデータが改善するかどうかを見極ることを目的としています。
詳細には、回復までに用する日数を主要評価項目としており、回復日を以下の3つのいずれかと定義しています。
<回復日の条件>
1.入院はしているが、酸素補給処置などの継続的な治療が不要になった日。
2.活動制限や家庭用の酸素補給機器を必要とするものの、退院が可能となった日。
3.活動制限がなく、退院が可能となった日。
上記3つの治験に対するレムデシビルの結果についてですが、私はアビガンに近い印象を持っており、軽症患者においては統計学的に有意な臨床結果を得られる可能性があるものの、ECMOや人工呼吸器を必要とする重篤な患者に対してはその限りではないと推測しています。
その詳細については2020年05月01日に配信を予定している「製薬・創薬業界『コロナウイルス感染症に対するレムデシビルの効果』」にて述べさせて頂きます。
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