2019年5月16日、米国の法律事務所Levi&Korsinskyがメディシノバの役員および取締役が受託者責任に違反しているかどうかの調査を開始すると発表し、メディシノバが公式にその事実を否定するまでに事が大きくなりました(詳しくは「メディシノバ 受託者責任問題の行方」を参照下さい)。
そして、2019年9月5日の社長メッセージにより、同法律事務所からの受託者責任に関する正式な調査・追求の動きは収まったと受け取れました。
では、法律事務所Levi&Korsinskyがなぜこの案件を引き起こしたのか、事実と私の調査とを照らし合わせ、その意図を考察します。
Levi&Korsinskyの主な収益源は株主を巻き込んだ上場企業への損害賠償請求訴訟(証券訴訟)による手数料です。
株主代表訴訟と混同される証券訴訟ですが、主たる違いは証券訴訟による賠償支払先が株主に対して、株主代表訴訟はその支払先が企業となります。
メディシノバに対する同案件もこの証券訴訟に該当し、賛同する株主を集め、メディシノバの執行役員や取締役員に対して賠償請求を起こそうとした試みでした。
なお、実際に同案件が進展し、訴訟が起こされ、同事務所が率いる原告が勝訴した場合、その賠償金を受け取れる者は賛同した株主のみになります。
さて、Levi&Korsinskyによる同案件の背景にはもちろん証券訴訟による代理人報酬を狙う動きがありますが、それ以外にも見込み顧客の獲得の動きが見られました。
同事務所は2019年に入って以降(厳密には3月末頃から)、今まで行っていなかった調査段階レベルでのプレスリリースを発行するようになりました。
そして同事務所は2019年3月末以降、現在までに計32件(32企業)の調査開始リリースを発行しました(図表1)。
しかし、実際に調査から訴訟へと展開されたものは32件中1件のみです。
それと並行して、同事務所は今年に入り、個人投資家向けのシステムをリリースしました。
このシステムはCOREと呼ばれ、保有もしくは過去に保有していた銘柄と集団訴訟活動のステータスを結びつけるものです。
COREを簡単に定義すると「集団訴訟円滑化システム」であると言えます。
同事務所はこのシステムを用いて将来的な集団訴訟活動の能率・効率や、個人投資家の集団訴訟への参加意欲を促していくと考えられます。
結論として、メディシノバも巻き込まれた法律事務所Levi&Korsinskyによる調査開始プレスリリースですが、その意図は集団訴訟を実際に行うためでもあり、かつ、本調査および事実関係からも同事務所による将来見込まれる集団訴訟の顧客獲得に向けた施策の意味合いも多分にあります。
<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com
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