メディシノバ 進行型多発性硬化症適応の既存薬品とMN-166(イブジラスト)の優位性

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米国には進行型多発性硬化症適応の既存薬が3種類存在します。今回はその既存薬とMN-166(イブジラスト)の同適応症パイプラインについて考察します。

その前にまず、進行型多発性硬化症がどういった症状なのか、また何が原因となり同症状を引き起こすのかを見ていきます。

進行型多発性硬化症(PMS:Progressive Multiple Sclerosis)は多発性硬化症(MS:Multiple Sclerosis)の大きく2種類に分類した内の1つです。

もう一方は再発寛解型多発性硬化症(RRMS:Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis)です。分類は症状の度合い(ステージ)ではなく、症状の進み方によりされます。

また、国際的なMSの判断基準であるMcDonald判断基準によって明確に分類されます。

(図表1:多発性硬化症の分類 作成:SKブログ)

<補足>
・急性増悪:McDonald基準で定義される急性増悪とは、中枢神経の障害により引き起こされる病状が24時間以上持続して認められることである。また、発熱や感染症は伴わない。

・1年以上の継続した神経症状の悪化:急性増悪とは別のMSに起因する神経症状の悪化を意味する。

 

さらに、PMSは一次性進行型(PPMS:Primary PMS)と二次性進行型(SPMS:Secondary PMS)に分類されます。

この分類は単純であり、最初からPMSと診断された場合はPPMSと診断され、過去にRRMSと認定された後に1年以上の継続した神経症状の悪化が認められた場合はSPMSと診断されます。

(図表2:進行型多発性硬化症の分類 作成:SKブログ)

多発性硬化症の基本的な分類は以上ですが、それ以外にも細かな分類があります。

例えばメディシノバが2019年4月2日に初めて言及したSPMSの再発の有無がそれに当たります。

これはRRMS→SPMSと病状が進行した後に急性増悪の有無を指し、この場合「再発を伴う(または伴わない)二次性進行型多発性硬化症」と診断されます。

また、PMSと診断された後に1年以上の継続した神経症状の悪化が認められなければ「進行が伴わない進行型多発性硬化症」と診断されます。

・メディシノバ:SPMSの再発の有無について言及(抜粋)
再発を伴う二次性進行型MSに対しては、最近2つの治療薬が続けてFDAから承認されましたが、再発を伴わない二次性進行型MSの長期治療用に承認された薬剤はまだありません。多くの二次性進行型 MS 患者は再発が無いため、治療薬の必要性は非常に大きいと考えています。

 

さて、ここまでは進行型多発性硬化症(PMS)の病状について述べましたが、続いて米国市場におけるPMSの既存薬について見ていきます。

米国には現在有効なPMS適応医薬品が3種類あると上で述べました。その3種類の医薬品に対し、メディシノバのMN-166がどの様な優位性を持つのかを比較していきます。

(図表3:進行型多発性硬化症の治療薬とMN-166 作成:SKブログ)




多発性硬化症(MS)の適応について、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)と再発を伴う二次性進行型多発性硬化症(SPMS)、そして、一次性進行型多発性硬化症(PPMS)と再発を伴わないSPMSと2つの組み合わせに区分される傾向があります。

これは薬品が急性増悪に対する効能を持つか(前者区分)、もしくはそれ以外の神経症状の悪化に対する効能を持つか(後者区分)によるものかと思われます。

メディシノバがMN-166の開発をRRMS適応からPMS適応へと修正したことも、これに大きく関係するはずです。

・メディシノバ:MN-166の開発をRRMS適応からPMS適応へ修正(抜粋)

再発型多発性硬化症を適応として当社が東欧で行った臨床試験のサマリーデータ(神経学専門医学雑誌に発表された学術論文)を審査した際に、神経保護作用を持つことが示唆されたMN-166に興味を持ちました。フォックス医師と当社の首脳陣は、MN-166に最も相応しいのは“進行型”の多発性硬化症治療と考え、NINDS傘下のNeuroNEXTからの治験研究費助成金の取得を目指しておりました。

 

MN-166はMSによる脳萎縮を上記3種類の薬品に比べ大きく抑えると実証されています。仮に脳萎縮が急性増悪以外の神経症状の悪化に寄与するとしたらこれほど大きな強みはありません。

なぜなら、MN-166以外の薬品は急性増悪に対する効果があったとしても、それ以外の神経症状の悪化にはそれほどの強みが無いと考察出来るからです。

また、MSの40-50%がPPMSと再発を伴わないSPMSで占められると推定されます。分かりやすく乱暴なまとめ方をするならば、「急性増悪に対する治療薬は存在してもそれ以外の神経症状の悪化に対する治療薬は存在しない。MN-166は後者適応の初めての治療薬になる可能性があり、MS市場の40-50%を独占できる可能性がある。」となります。

薬品の適応の後は効力について考察する必要があります。MSの効力を評価する際に用いられる指標が進行リスク減少度(=1 – ハザードレシオ)です。

図表3でも示す通りですが、投資家の感覚ではどの薬品もさして大差が内容に思われます。しかしMN-166について同項目を掘り下げていくと上記仮説の信憑性が高まります。

(図表4:MN-166の進行リスク減少度 作成:SKブログ)

上記図表4はMN-166の進行リスク減少度(全体:図表3)の内訳です。この図表データからMN-166の「急性増悪 < それ以外の神経症状の悪化」というポテンシャルが見えてくるはずです。

さらに再発を伴うSPMSに対するその効力は他の薬品に比べ約1.5~2倍です。これは大きな優位性を持っていると言って問題ないでしょう。

またPPMSについては大きな優位性は認められませんが、次に述べる安全性という観点を考慮するとMN-166のプライオリティは他に比べると高くなるはずです。

他の薬品の内訳データは得ていないので推測ですが、RRMSと再発のあるSPMSによる進行リスク減少度の押し上げ効果が効いていると思うので、再発のないSPMSだけで比較した場合はMN-166の優位性がさらに大きくなると思います。

Merck社のMavencladに至ってはPMS患者ではなくRRMS患者の治験結果を用いて承認されているため、PMS患者の進行リスク減少度は現時点で明確ではありません。

最後に安全性について考察します。図表3を見ていただくとお分かりですが、MN-166とそれ以外の薬品の副作用を比べるとMN-166の安全性の高さを感じると思います。

特にMavencladとOcrevusの副作用は悪性腫瘍リスクの増加や感染症など、素人目でも怖く感じるものが上げられています。また同2薬品はその観点から投与制限が設けられています。

(図表5:米国での多発性硬化症の患者区分 作成:SKブログ)

以上より、MN-166は効力・安全性ともに他の薬品よりも優位性が認められます。MN-166が上市した場合にはその優位性により、最大で多発性硬化症患者42.4%のシェアを獲得出来るのではないでしょうか(図表5参照)。

 

<参考文献>
多発性硬化症の分類(多発性硬化症の再発や進行はどのように定義されるのか?)
Mavencladの詳細(Center Watch)
・Mavencladの治験データ(Clinical Review Report / Merck Mavenclad
Mayzentの詳細(Center Watch)
Ocrevusの詳細(Center Watch)
MN-166、Mayzent、Ocrevusの比較資料(メディシノバ 2017年12月期決算説明会)
MN-166の進行リスク減少度の分類(MN-166の進行型多発性硬化症を適応とするSPRINT-MS フェーズ2b臨床治験サブグループ解析結果)
米国での多発性硬化症の患者区分(Multiple Sclerosis: Facts, Statistics, and You)

 

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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