メディシノバ『MN-166による進行型多発性硬化症治療薬の自社フェーズ3治験の考察(適応症の修正編)』

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※当記事は2021年5月25日にSKメルマガで配信されたコンテンツです。

 

2021年年次総会招集通知に同封された社長メッセージの文中に「当社は、導出・共同開発という選択を主線としつつ、自社で実施可能な第3相治験についてもあらためて検討し、その計画を立案中であることをお伝えさせていただきます。」と記載があったことから、MN-166の導出契約の行方、および、自社によるPMS(進行型多発性硬化症)フェーズ3治験の方法や可能性について考察を致します。

https://medicinova.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/05222021.pdf

まずMN-166の導出契約の行方につきましては、残念ながらその(導出契約が締結される)可能性は極めて低くなったと言わざるを得ません。

そして、導出契約を締結しない限り、資金面の理由でPMSフェーズ3治験の実施は難しいことに変わりが無いため、自社でのフェーズ3治験の計画を立案していることに疑問を感じるかと思います。

自社での同フェーズ3治験を行う場合、「1.資金獲得の手段の変更」、「2.治験プロトコルの変更」、「3.適応症の修正」が主に考えられ、今回の自社フェーズ3治験の計画に関しては「3.適応症の修正」が可能性として最も高いと考えております。

導出契約締結を前提としたPMS治療薬の開発ではEDSSスコアをエンドポイントの指標とするnaSPMS(無再発二次性進行型多発性硬化症)を適応とするものでしたが、自社開発では視覚障害度(コントラスト感度、視野の広さ、視力)をエンドポイントの指標とするPMS(内、naSPMSを主要ターゲットとする可能性が高い)に起因する眼疾患(視神経炎)を適応とするのではないのでしょうか。




視神経炎の最も一般的な原因は多発性硬化症とされ、RNFL(網膜神経線維層)の厚さは視神経炎を発症することで減少することが知られ、結果として視覚障害を引き起こします。

また、視神経炎によるRNFLの厚さの減少は、RRMS(再発寛解型多発性硬化症)< PPMS(一次性進行型多発性硬化症)< SPMS(二次性進行型多発性硬化症)の順で大きくなることから、同適応症ではnaSPMSを対象とすることが望ましいのではと考えられます。

同プロトコルでのエンドポイントとされる視覚障害度の測定は、ごくごく一般的に利用されている眼科用の測定器を用いられ、入院や高額な技術料なども発生しません。

また、同プロトコルでは根本的なPMS治療を目的としていないため、PMS治療費は患者負担となり、一般のPMSフェーズ3治験のプロトコルに比べて患者一人あたり年間約200万円もの費用を削減可能です。

同プロトコルを月1回の検査、最短6ヶ月と仮定した場合、患者一人あたり費用はおおよそ10万円となります。

そして、エンロール数を1,000人と仮定すると、エンドポイントに関するデータ取得にかかる費用の最低ラインは1億円となります。

もちろん、これは米国での治療費を参考に算出した値であり、治験となるとさらに高額になりますが、PMS治療薬フェーズ3治験にかかる数百億円もの費用と比べると非常に低コストとなり、自社でのフェーズ3治験による開発が行なえます。

以上より、今回の自社フェーズ3治験の計画に関しては「3.適応症の修正」が可能性として最も高いと考えております。

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