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メディシノバ『MN-166(イブジラスト)のARDS動物モデルスタディ(Med Sci Monit、2020; 26:e922281)の解説【スタディ方法編】』
メディシノバ『MN-166(イブジラスト)のARDS動物モデルスタディ(Med Sci Monit、2020; 26:e922281)の解説【肺水腫編】』
<本文>
2.血清および肺組織における炎症性サイトカイン
図表2(添付ファイル)では、LPS誘発ARDSマウスにおける、A:炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)、およびGAPDHの発現水準の分析、そして、B:炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)の定量分析を表しています。
<炎症性サイトカイン>
・サイトカイン:細胞間相互作用に関与するタンパク質。作用や放出細胞は多種多様。
・TNF-α:腫瘍壊死作用を有するサイトカイン。
・IL-1β:免疫、炎症を制御するサイトカイン。
・IL-6:液性免疫を制御するサイトカイン。
・MCP-1:免疫調節や炎症プロセスに関与するサイトカイン。
A:肺組織における炎症性サイトカインおよびGAPDHの発現水準の分析
同スタディでは健康体グループ(Normal)の炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)とGAPDHの発現量を1とした場合に、その他三つのグループ(LPS・LPS+IBU 3.75mg/kg・LPS+IBU 7.5mg/kg)の対比を図表2のAとしてまとめています。
Aはウェスタンブロッティングにより、ターゲットとなる物質を膜に転写することで、炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)とGAPDHを検出しています。検出し視覚化されたものが左上で、数値化されたものが右上と下となります。
そしてA左上部から、炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)の量が「健康体」グループにおいて最も少なく(薄く)、「LPS投与」グループが最も多い(濃い)ことが分かります。
また、「LPS投与+イブジラスト3.75mg / kg」と「LPS投与+ イブジラスト7.5mg / kg」を比べると「LPS投与+ イブジラスト7.5mg / kg」の方が量が少ないことから、イブジラストは炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)の量を減らす効果があり、さらにイブジラストの投与量が多い方がより炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)を減らせるという仮説が生まれます。
対して、GAPDHにはどのグループにおいても変化が見られませんでした。これは「1.肺水腫」と同様に、イブジラストがGAPDH量の抑制に効果が発揮されていないのではなく、そもそもLPS投与による肺炎にGAPDHが関わっていない(GAPDHの量が増加しない)ことも考えられます。
しかし、残念ながら同スタディではその理由までは考察されていません。
A右部および下部は検出炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)の発現量を数値化し統計解析をしたものです。
同スタディではまず、「健康体」グループと「LPS投与」グループにおいて、LPSを投与した場合にしっかりと(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)が増加しているかを解析しています。
その結果、LPSを投与したマウスは炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)がそれぞれ、TNF-a:約2倍、IL-1β:約1.5倍、IL-6:約2.5倍、MCP-1:約1.7倍に増加することが立証されました(全てにおいて、p < 0.001)。
その上で、「LPS投与」グループと「LPS投与+イブジラスト3.75mg / kg」グループおよび「LPS投与+ イブジラスト7.5mg / kg」を統計解析することで、イブジラストが炎症性サイトカイン(TNF-a・IL-1β・IL-6・MCP-1)を減少させるかどうかを検証しています。
その結果、「LPS投与+イブジラスト3.75mg / kg」グループでは「LPS投与」グループに対して、TNF-a:約20%(p < 0.05)、IL-1β:約10%(p < 0.05)、IL-6:約25%(p < 0.01)、MCP-1:約20%(p < 0.05)の水準抑制効果が得られました。
「LPS投与+ イブジラスト7.5mg / kg」グループでは「LPS投与+イブジラスト3.75mg / kg」グループよりもさらに効果が見られ、「LPS投与」グループに対して、TNF-a:約35%(p < 0.01)、IL-1β:約20%(p < 0.01)、IL-6:約45%(p < 0.001)、MCP-1:約25%(p < 0.01)の水準抑制効果が得られました。
上記結果からイブジラストは炎症性サイトカインの抑制に高い効果を発揮すると想定され、特にIL-6に対する効果と再現性には目を瞠るものがあります。
補足として、IL-6は炎症時の急性期反応などに重要な役割を担うとされ、その異常産生が多発性骨髄腫や関節リウマチなどの疾病に深く関与します。
Rocheおよびその関連会社の中外製薬のトシリズマブが、IL-6受容体阻害薬として関節リウマチを始めとする治療薬として承認されています。
ここで疑問に思うことは、そのトシリズマブがイブジラストと同じようにARDS治療薬として開発されるかどうかですが、トシリズマブは液性免疫を制御するサイトカインであるIL-6の働きそのものを遮断する作用(IL-6受容体阻害)のため、感染症のリスクが常に付きまといます。
よって、ARDSを発症する原因やその状況によって投薬の制限を受けるため、その研究はされているもののトシリズマブが日の目を見る可能性は低いと思います。
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