メディシノバ『アビガンのグローバル特許から読み解くMN-166の用途特許の実情』

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2020年5月25日に日経新聞に掲載された記事『富士フイルム株、「特許の崖」懸念で急落 アビガン期待7割消失』を参考に、富士フイルムが開発をしたアビガンの特許状況からメディシノバが保有するMN-166の特許の実情を解説したいと思います。

・富士フイルム株、「特許の崖」懸念で急落 アビガン期待7割消失(日本経済新聞社)
https://www.nikkei.com/article/DGXLASFL25HF3_V20C20A5000000/?n_cid=NMAIL007_20200526_H

 

『現在、アビガンは製造するための「製剤特許」については国内外で保有する一方、「物質特許」は海外で失効しており、国内のみで有効な状況だ。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「収益の源泉である『物質特許』が海外で切れている点を踏まえると、市場が期待するほどアビガンの業績寄与は大きくならない可能性があり、現在の株価は買える水準ではない」と話す。

新薬の物質特許が切れ、後発薬が登場して売り上げが奪われる現象を指す「特許の崖(パテントクリフ)」の状況に陥っている可能性がある点を警戒する。』

富士フィルムのアビガン(ファビピラビル)に纏わる特許は、日本国内では同社がアビガンの物質特許を保有しているものの、その他国地域では製剤特許のみを保有している状況です

また、新型コロナウイルスが2019年末に顕になってきたことにより研究競争が一斉スタートであったことを考えると、富士フィルムが世界各地で新型コロナウイルス感染症に対するアビガンの用途特許を獲得することは難しい(または価値が低い)と考えられます。

故に、富士フィルムのアビガンによる新型コロナウイルス感染症に対する特許戦略は、日本を除く地域では物質・用途特許を保有していない(または保有できない公算が高い)状況であり、アビガンのグローバル戦略による大きな売上を考えるには覚束ないと言えます。

物質特許を得るには物質を生み出すことが必要ですが、用途特許を得るには他社よりも早く研究をスタートさせることが重要であり、今回の新型コロナウイルス感染症のように突発的に発生した疾患に対しての用途特許を前提とした開発は、非常に競争率が高く、賢い戦略とは言えません。

富士フィルムのアビガンに関する実例からも分かる通り、物質特許切れの化合物に対して用途特許を前提とする経営戦略では、他疾患への適応可能性と用途特許獲得までの研究スピードが戦略の第一ステップとして最も重要です。

富士フィルムは残念ながら最初の段階で躓いてしまいました。

メディシノバが導入したコア製品であるMN-166(イブジラスト)とMN-001(タイペルカスト)の物質特許は既に失効しているものの、両製品に紐づく適応症をカバーする多くの用途特許(米国)を同社は保有しています。

特にMN-166の進行型MS(多発性硬化症)とドラッグ乱用・依存症に対する用途においては日本や欧州でも特許を得ています。

メディシノバのように、物質特許切れを起こした物質だとしても主要国において他の治療用途による用途特許を獲得さえしてしまえば、他社の参入をリジェクトすることが可能であり、大きな売上を独占することが可能です。

以上の通り、物質特許切れ化合物の用途特許を前提としたビジネスを成り立たせるためには、競争相手が少ない内に他社に先駆け用途特許を押さえることが重要であり、それに失敗したのが富士フィルムのアビガンを用いた新型コロナウイルス感染症治療法です。

対して、他社に先駆け研究開発を進め、競争相手(イブジラストによる多発性硬化症治療法の開発をすすめていたAvigen)を資本により潰すなど、抑えるところを抑えているメディシノバは用途特許を前提としたビジネスの舵をしっかりと取れています。

 

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