メディシノバが予定または進行しているMN-166(イブジラスト)に対する変性性頸椎脊椎症(DCM)適応のフェーズ3パイプラインが上市した場合を想定し、MN-166の米国での年間売上市場規模を予測したいと思います。
DCMはメディシノバが以下のように公表している通り、脊椎神経のダメージによって引き起こされる神経学的機能不全症状です。
・抜粋:メディシノバ ホームページ「DCM(変性性頸椎脊椎症)」
「頸椎脊髄圧迫によって引き起こされる麻痺(まひ)と定義されており、脊髄神経の圧迫は、麻痺、うずき、痛み、頸部の硬直、腕・手・指の痛み・痺れなどの神経学的機能不全につながります。DCM患者は、バランスおよび歩行の不調、協調運動障害、腕、肩または手の筋力低下、リズム筋攣縮、筋肉硬直、筋肉喪失、過度神経反射および膀胱・直腸機能障害など、さまざまな症状を呈します。」
DCMの治療薬は現在存在せず、治療費などのデータを競合となる医薬品から参考にすることが出来ません。そのため市場規模予測が非常に難しいというのが実情です。
以上の理由から、今回の予測では病状の性質に類似点が多い頚椎症に焦点を当てます。そして、用途が上記MN-166のDCM適応のフェーズ3パイプライン治験と類似するPfizer社のLyricaの薬価を参考にします。
*頸椎症:首の脊椎円板に加齢に伴う摩耗ことで、椎間板が脱水し収縮すると骨の縁に沿った骨の突起を含む変形性関節症の徴候が現れる。頸椎症は年齢とともに悪化し、60歳以上の人の85%以上が頸椎症の影響を受けている。
*Lyrica:神経障害性疼痛の第一選択薬に推奨されている薬。
*神経障害性疼痛:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの鎮痛薬の効果がほとんど期待できない難治性の痛み。
参考にするLyricaの薬価を設定する際、その容量を決定する必要があり、頚椎症治療ではLyricaの投薬量は1回75mgを1日2回の計150mgが適量と考えられています。
そして、米国の薬局ではLyrica 75mgあたりおおよそ$5.97の値付けがされています(120カプセル/パッケージ)。よって1日あたりに換算すると$11.94となります。
それを基に、1日2回のLyrica 75mgを上記フェーズ3パイプライン治験と同様に8ヶ月間継続するものと仮定し、患者1人あたりの売上高を算出します。米国には200,000件以上のDCM手術が行われているため、1人あたりの同売上高に手術件数を掛け合わせた値をMN-166のDCM治療薬の米国市場規模とします。
以上、参考値と算出値を図表1に示します。
推定によるとMN-166 DCM治療薬の米国市場規模は$573,120,000と算出されました。
また、米国の医薬品販売は日本と異なり特殊な環境におかれています。特にリベートの概念が米国での医薬品の高騰に繋がり問題視されています。
リベートは販売代理店(薬局)の販売手数料と理解して下さい。ジェネリック医薬品でない限り、平均として販売額の10%がリベートの割合と知られています。
リベートは製薬企業が販売代理店に支払うものです。よってそれを考慮し、リベート調整後のMN-166 DCM治療薬の米国市場規模を算出すると$515,808,000と推定されます。
<参考文献>
・Lyricaの効能、効果について(エーザイ「リリカ® カプセル」 新たな効能・効果を取得)
・Lyricaの薬価について(Lyrica Prices, Coupons and Patient Assistance Programs)
・Lyricaの最適投薬量について(脊椎内視鏡下手術の実際と手術前後のプレガバリン(リリカ)使用経験)
・米国の製薬企業のリベートについて(US Pharmaceutical Pricing: An Overview)
<調査銘柄の概要>
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