本記事で5つ目となるメディシノバとReceptos(レセプトス)の比較ではパイプラインの導出額の推定を行います。
・過去の記事
1.メディシノバ「買収総額9000億円のReceptos(レセプトス)との比較–財務形態–」
2.メディシノバ「買収総額9000億円のReceptos(レセプトス)との比較–パイプラインの本数と進捗状況 –」
3.メディシノバ「買収総額9000億円のReceptos(レセプトス)との比較–パイプラインの治療市場規模–」
4.メディシノバ「買収総額9000億円のReceptos(レセプトス)との比較 – パイプラインの治療薬市場規模 –」
両社計14本のパイプラインの推定導出額の算出に当たり、Principia(プリンシピア)社が$805,000,000でSanofiに導出した多発性硬化症パイプラインを参考事例として用います。
これは過去の記事「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応パイプラインの導出額」にて用いた事例と同様です。
前提条件や算出方法について以下にまとめます。また、上記「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応パイプラインの導出額」で記述した「3.導出金額選出方法(y)」をより細かく明記しています。
<前提と参考事例>
1.前提:制度の高い予測は困難
・医薬品の導出は契約内容が複雑。
・同社の開発薬品は既存薬が無いもしくは少ない。故に参考となる他社の導出事例が極めて少ない。
・PMS単体での契約ではなく、他のパイプラインも考慮した契約内容であると推測する。
2.参考事例
・導出日:2017年11月9日
・企業:Principia Biopharma社
・適応症:多発性硬化症適応
・市場規模:$10,925,000,000
・導出時の開発状況:フェーズ1途中
・導出額:$805,000,000
3.導出金額選出方法(y)
y = 市場規模 * 開発コスト調整係数 * 開発リスク調整係数 * 買収リスク割引率
図表1,2のデータを用いて算出した両社のパイプラインの推定導出額を以下に示します。図表3はメディシノバとReceptosのパイプライン推定導出額の合計比較であり、図表4,5はメディシノバのパイプライン推定導出額の詳細と割合、図表6,7はReceptosのパイプライン推定導出額の詳細と割合です。
買収総額$7,200,000,000(当時約9,000億円)のReceptosよりもメディシノバの方がパイプラインの推定導出額合計が大きいことが新たな発見です。さらにその額もReceptosのそれよりも約1.6倍と非常に大きなものとなっています。
メディシノバもReceptosも多発性硬化症適応パイプラインの推定導出額が全体の半分以上を占める形となりました。
特にReceptosは「買収総額9000億円のReceptos(レセプトス)との比較 – パイプラインの治療薬市場規模 –」でも多発性硬化症の治療薬市場価値の割合が64.3%と非常に高かったのですが、導出額においてもその割合は非常に高く、4分の3の75.0%を超える形となりました。
Receptosに対して値付けされた総額$7,200,000,000という企業価値の大部分が多発性硬化症適応パイプラインからもたらされているとすると、果たしてメディシノバの企業価値はどの程度になるのでしょうか。
次回は「買収総額9000億円のReceptos(レセプトス)との比較」シリーズの最終記事として、両社の企業価値を比較・分析していきます。
<参考文献>
・導出額の参考事例(SANOFI, PRINCIPIA AGREE TO DEVELOP MULTIPLE SCLEROSIS DRUG CANDIDATE)
<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com
Recent Comments