メディシノバ『MN-166による進行型多発性硬化症治療薬の自社フェーズ3治験の考察(治験プロトコルの変更編)』

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※当記事は2021年6月6日にSKメルマガで配信されたコンテンツです。

 

2021年年次総会招集通知に同封された社長メッセージの文中に「当社は、導出・共同開発という選択を主線としつつ、自社で実施可能な第3相治験についてもあらためて検討し、その計画を立案中であることをお伝えさせていただきます。」と記載があったことから、MN-166の導出契約の行方、および、自社によるPMS(進行型多発性硬化症)フェーズ3治験の方法や可能性について、今回は「2.治験プロトコルの変更」によって実現し得るかを考察を致します。

https://medicinova.jp/wp/wp-content/uploads/2021/05/05222021.pdf

現在のフェーズ3治験プロトコルの概要は、MN-166によるnaSPMS(無再発二次性進行型多発性硬化症)患者を対象としたEDSS(総合障害度評価スケール)を指標とするハザードレシオ(身体障害の進行リスク)の評価です。

そしてnaSPMS治療薬の開発では前記同様にEDSSを指標とするハザードレシオの評価法を前提とするべきと考えております。

PMS治療薬のエンドポイントとして脳萎縮度や網膜厚減少度なども有効であるとの議論もされてはいますが、FDAがそれらを認めることは無いはずです。




また、迅速承認(Accelerated Approval)による代用エンドポイントについても、5月16日のメルマガ配信「メディシノバ『MN-166(IFNβ併用含む)の無再発二次性進行型多発性硬化症を適応とする迅速承認の可能性』」でも述べた通り、PMSが重篤かつ生命を脅かす疾患ないことから、それが認められることはほぼありません。

そのため、従来通りPMSフェーズ3治験ではEDSS指標のハザードレシオの評価が求められます。

メディシノバはMN-166によるPMS全患者を対象とした同指標を用いた統計学的治療効果の達成のために約700人のエンロール数を想定していました。

このエンロール数は適応症をnaSPMS、そしてMN-166-IFNβ(MN-166とインターフェロンβの併用投与)を治療薬として投与することで縮小することが可能です。




ハザードレシオではエンロール数の少なさ(計37人)により統計学的有意差は検出されていませんが、それでも0.238と顕著な治療効果を発揮しており、また、障害の進行が確認された患者数の割合はMN-166-IFNβ投与群の方が28%少ないことが統計学的に認められています。

故に、フェーズ3治験のエンロール数を縮小することで治験費用を削減することが可能です。

ただし、FDAはフェーズ3のエンロール数に対しておおよそ300人以上を求めており、大規模集団のモニタリングを目的とするフェーズ3では、PMS患者数を考慮すると下限目一杯の設定は難しいように感じます。

エンロール数700人でも少なく感じるため、そこから100人、200人削減が限界かと思います。

エンロール数削減以外では治験サイトを国立病院に設置することで治験費用の節約が出来ます。

自社開発による費用の捻出は国立研究機関からの助成金が考えられます。

それはまさにPMSフェーズ2b治験で取った戦略と同じものですが、懸念点としてはPMSフェーズ3治験が対象になるかどうかです。

PMS治療薬の開発において、関わりの多い国立研究機関はNINDS(国立神経疾患・脳卒中研究所:National Institute of Neurological Disorders and Stroke)およびその傘下ネットワークのNeuroNextです。

メディシノバはNeuroNextを通じてNINDSから12億円の助成金を獲得し、PMSフェーズ2b治験を実施しましたが、NeuroNextではフェーズ2以下の治験に対するサポートが基本であるため、フェーズ3治験には関わらないと考えています。

そのため、フェーズ3治験の助成金はNINDSへ直接申請する必要がありますが、NeuroNextの治験ネットワークを活用しない状況においては予算が大きくなり、果たして助成金を得られるかは難しいところです。




最新の研究では中枢神経治療薬開発における最も重要なフェーズ3治験の費用は約42億円(中央値)であり、その幅は16億円~85億円と推定されています。

同研究の参照データには幸いなことにRoche社のOcrevusやBiogen社のZINBRYTAも含まれており、メディシノバが公表している通り1回のフェーズ3治験の結果を以て承認申請を行えるのであれば、エンロール数の削減によりその治験費用は40~50億円程度でも行える可能性があります。

以上のように、MN-166-IFNβによるnaSPMS患者を対象とするフェーズ3治験であれば、当初の予定よりも治験費用を削減出来、自社開発の可能性が見えてきます。

しかしPMSフェーズ3治験を自社で行う場合、40~50億円と比較的安価に行えるものの、今のメディシノバがその額を用意することは難しい状況です。

そのため、ALSフェーズ2b/3治験のように、エンロール数の割合を1:2(例 200人:400人)とするようなフェーズ2b/3治験のプロトコルを作成し、中間結果であるフェーズ2b治験のポジティブな結果を以てライセンシングや新規株式発行によるフェーズ3治験の資金調達を行う流れが一つの案として考えられます。

この場合、治験の長期化は避けられませんが着実にPMS治療薬の開発を進められます。

懸念点としては200人規模のフェーズ2bを行う場合でも15億円程度の予算が必要であり、今のメディシノバにその予算を組む余裕がないことです。

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