メディシノバ 2019年12⽉期決算説明会の総括(後編:MN-001について)

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2020年2月20日、メディシノバは2019年12⽉期決算説明会の動画を公開しました。メディシノバ経営陣の生の声が聞ける機会のため、毎年注目度の高いイベントとなっています。

本記事では同説明会に対する私の印象を踏まえた上で総括をしたいと思います。また、読者の方からの本件に関するお問い合わせが非常に多いため、一部構成であったものを三部構成にし、可能な限り早く公開したいと思います。

<過去の記事>

メディシノバ 2019年12⽉期決算説明会の総括(前編:経営陣とALS治験について)
メディシノバ 2019年12⽉期決算説明会の総括(中編:NFLとALSバイオマーカー治験について)

 

5.MN-001の⾎清中性脂肪値をターゲットとする開発

メディシノバは肝臓専⾨医Dr. Gutierrezをコンサルタントに招いてMN-001の血清中性脂肪値をターゲットとする治療薬の開発に乗り出しました。

もともとMN-001はNASH治療薬として期待されていましたが、NASH治験ではMRIを絡めるエンドポイントの設定が求められるため、メディシノバでは開発費を賄うことが難しい状況が続いていました。

そこでメディシノバは、MN-001の開発戦略を高脂血症などの血清中性脂肪値の異常値を下げることで治療が可能な病状にターゲットを変更しました。例えば高脂血症であれば、採血によりその数値がわかります。

ターゲット変更がNASH治療薬の開発を断念したという訳ではなく、あくまで開発順序を入れ替えた形です。まずは高脂血症などの治療薬を開発し、財務が拡大した段階でNASH治療薬の開発も開始すると予想されます。

この戦略は興和でも取られたものです。興和は高脂血症治療薬のパルモディアを上市させ、現在NASH治療薬の開発を進めています。

そして、高脂血症治療薬といえばスタチンが有名です。スタチンは物質名であり商品名ではなく、初期スタチン製品は既に後発薬が出てきています。

また、スタチンを改良した治療薬で有名なものがAmgen社のRepathaです。Repathaの2019年度の米国売上高は$117,000,000です。

メディシノバは2018年4月13日に「NASH/NAFLD を適応とするフェーズ 2 臨床治験の中間解析に関するポジティブデータ発表のお知らせ」において、MN-001の血中悪玉コレステロールLDLの4週間後数値で28.8%(p=0.00006)の減少効果を発表しました。

この数値はRepathaの2年後数値で55.3%低減させるという結果には及びませんが、Repathaの薬価の高さ、そしてLDLの改善はその改善幅ではなくLDLの数値を適正値に持って行くことのため、メディシノバ経営陣は勝負になると判断したようです。

参考までに、Pfizerの高脂血症治療薬Lipitorの最高売上は米国において約$7,000,000,000です(2006年度)。

NASHはその症状により発見が遅れます。しかし、血中LDLの数値は健康診断によって比較的早期に発見出来ます。

メディシノバはNASHになってからではなく、NASHになる前に治療を行うことをMN-001の第一歩として考えており、それは高脂血症患者の数から見ても理に適った判断です。

 

<参考文献>
パルモディアについて(興和・三輪社長 高脂血症薬パルモディア TG低下患者の第一選択薬に育成)
2019年度のRepatha売上(Amgen:Product Sales Detail by Product and Geographic Region)
Repathaの治療効果(Long-Term Treatment With Evolocumab Among Japanese Patients)
Lipitor売上データ(Lipitor is still churning out billions of dollars)

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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