メディシノバ『急性肝障害モデルにおけるMN-001(タイペルカスト)による研究について』

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2020年10月13日にメディシノバは「MN-001(Tipelukast)急性肝障害モデルにおけるポジティブな結果のThe Liver Meeting デジタルエクスペリエンス™2020 での発表に関するお知らせ 」を公表しました。

https://medicinova.jp/wp/wp-content/uploads/2020/10/10132020.pdf

まず急性肝障害とは急速に多臓器不全を誘導する疾患であり、その代表的な例は急性肝炎と呼ばれ、ウイルス感染による肝炎やアルコール・薬剤誘導性肝炎や自己免疫性肝炎が知られています。

そしてメディシノバがMN-001を用いて肝炎に焦点を当てた開発を続けていることから、今回の急性肝障害もこの急性肝炎と捉えて宜しいかと思います。

このとこから、急性肝障害モデル = 急性肝炎モデルと読み替えられます。

ここで言うモデルとは病態を持つマウスのことであり、同じ病態でも多様な発症機序が存在するため、多種多様なマウスが非臨床試験サービス会社より供給されています。

これより、メディシノバは「急性肝炎を患ったマウスに対してMN-001を投与した結果、何らかのポジティブな結果が得られた」と読み解けます。

また、急性肝炎の原因物質は主に4種類(コンカナバリン、CCl4、チオアセトアミド、D-gal+LPS)存在し、それぞれT細胞の活性化、活性酸素代謝物の障害、代謝物の障害、免疫細胞の活性化に関わります。

以上のように、急性肝障害モデルは今回のケースに限ると急性肝炎モデルと同意であると推測され、かつ急性肝炎モデルには4つの原因物質が存在するため、化合物の見込み作用機序と合った病態のマウスを選択する必要があることが分かると思います。

続いて研究発表タイトル「Modulation Of TGF-β1 Signaling By Interaction Of cAMP Effectors and TGF-β1Type I Receptor In Hepatic Stellate Cells」を読み解きます。

同タイトルを和訳すると「肝星細胞内におけるcAMPエフェクターとTGF-β1タイプI受容体の相互作用によるTGF-β1シグナル伝達の調整」となります。

同タイトルから推測するに、MN-001は肝星細胞中のcAMPエフェクター濃度の上昇およびTGF-β1受容体阻害作用により、肝臓の炎症・線維化の抑制効果の期待が持てるのではないかと考えられます。

まず肝星細胞は、肝臓内の肝細胞と内皮細胞の間隙に存在する細胞であり、肝臓が傷害を受けた際に活性化され、筋線維芽細胞の様に損傷組織の修復や再生を担います。

<筋線維芽細胞>
損傷組織の修復や再生や恒常性維持のために組織の線維芽細胞が分化した細胞。

修復や再生に関わる肝星細胞ですが、活性化の際に分泌するTGF-βやコラーゲンが過度である場合、必要以上の炎症や線維化を引き起こしてしまいます。

よってごく単純に考えるのであれば、肝星細胞の活性化を抑制することで、肝臓の炎症および線維化を抑制することが可能となります。

肝星細胞の活性化にはTGF-βの細胞内濃度が関わります。

血小板中のTGF-β1と肝星細胞の同受容体が結合することで肝星細胞は活性化しますが、MN-001は同受容体を直接的または間接的に阻害することで肝星細胞の活性化を抑制する可能性が示唆されます。

また、肝星細胞は血小板中のATPをアデノシンまで分解することで、肝星細胞内にcAMPエフェクターを誘導する働きをします。

cAMPエフェクターは臓器によりその働きが異なり、肝臓でのcAMPエフェクターの働きは肝星細胞の増殖の抑制に関わります。

よって、肝星細胞内のcAMP濃度を高めることで肝星細胞の活性化を抑制することが可能です。

MN-001は肝星細胞内のcAMP濃度を高める作用があり、それはおそらく血小板の濃度を高、アデノシンの絶対量を増やすことにアプローチした作用になっているのではないでしょうか。

要約すると、MN-001は肝星細胞内のcAMP濃度を高めること、そして、肝星細胞でのTGF-βの結合を阻害することで肝星細胞の活性化を抑制し、この作用機序で肝臓の炎症や線維化を抑制する効果が期待されます。

この効果が発揮された場合、現在開発中のNASH治療薬だけでなく、ウイルス性、薬物性、免疫性など、多種多様な急性肝炎への治療薬として用いられる可能性があります。

なお、急性肝炎は一般的に認知されている慢性肝炎の前の段階のものと理解して宜しく、急性肝炎の開発および治験が始まった場合、その投与期間は比較的短期間(6ヶ月以内)になると予想されます。

 

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