メディシノバ 買収総額9000億円のReceptos(レセプトス)との比較 – 財務形態 –

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メディシノバの企業価値評価は保有する適応症パイプラインや開発手法の新規性を理由に正しく行うことは非常に難しいと以前から述べてきました。そのため、私は多少でも関連のある事例が生まれた際はそれを基にメディシノバの評価を行います。

2019年度中の導出や提携があるのか。あるいは買収提案がなされているのではないか。メディシノバ株主であれば様々な思考を巡らせていると思います。

今回は財務規模が違うにせよ、経口薬ozanimod(オザニモド)における主力パイプライン(再発型多発性硬化症MS適応)のフェーズ3治験途中に買収されたReceptos(レセプトス)に焦点を当てます。

本記事ではまず、買収直前年度という条件のもと、メディシノバ(2018年度)とReceptos(2014年度)の財務形態を比較していきます。

Receptosは2008年に設立され、2015年にCelgene(セルジーン)に$7,200,000,000で買収された創薬ベンチャー企業です。米国のAbbVie(アッヴィ)や日本の小野薬品へのパイプライン導出実績に加え、設立してから7年で買収されたため、買収当時の株主資本は潤沢でした。

買収前年の2014年度決算は売上高$5,900,000、営業利益$-111,570,000、当期純利益$-114,970,000という実績です。

同年度の財務状況は資産$678,007,000、負債$28,520,000、株主資本$649,487,000、そして累積損益$-210,879,000という状況でした。

2014年12月31日時点の株価状況は時価総額$3,872,096,266です。買収総額$7,200,000,000の約半分という状況でした。

Receptosの上記内容と2018年12月末時点でのメディシノバの財務状況を以下図表にて比較します。

(図表1:損益計算書 作成:SKブログ)
(図表2:損益計算書 – データ - 作成:SKブログ)
(図表3:貸借対照表 作成:SKブログ)
(図表4:貸借対照表 – データ - 作成:SKブログ)
(図表5:時価総額 作成:SKブログ)
(図表6:株式 – データ - 作成:SKブログ)

上記財務状況からメディシノバとReceptosの立ち位置を比較します。

損益計算書から、ビジネスモデルは両社とも同じく研究開発型の創薬ベンチャービジネスを軸にしていると読み取れます。メディシノバが売上がゼロなのに対してReceptosは多少計上しています。

これは導出一時金によるものですが、営業費用に比べると微々たるもののため無視して良いものと思われます。Receptosは目先の小さな利益よりも販売ライセンスによる将来の大きな利益に比重を置いた経営判断をしました。

貸借対照表の構成も酷似しています。しかし株主資本項目の累積欠損ではメディシノバがReceptosを上回っています。創薬ベンチャーでは累積欠損が大きくなることはごくごく一般的ですが、この2社を比較した場合に限って、メディシノバの累積欠損は異常といえます。今回のケースでは現状の11分の1である$-31,000,000程度に抑えておくことが望ましいです。

また、Receptosが販売ライセンスに比重を置いた判断は余裕のある資産状況が可能にしました。しかしメディシノバは自転車操業状態に陥っているため、導出交渉の際は契約一時金に比重を置いた経営判断を行う必要が出てきます。

時価総額はメディシノバがReceptosに比べ非常に小さいですが、PBRはメディシノバが4.70倍に対しReceptosが5.96倍となり、財務の大きさが時価総額に反映されています。創薬ベンチャーはパイプラインのポテンシャルが注目されますが、それを踏まえたとしても株主資本の5倍程度が適正です。そのため、両社とも投資家からの評価は一様になされています。

以上より、メディシノバとReceptosの財務比較ではその規模こそ違えど性質は同様であると言えます。しかし、メディシノバの累積欠損の大きさは将来の経営活動の選択肢を狭める可能性があります。

結果として、導出または買収直前の両社の財務形態は似たような形を成していますが、Receptosに比べてメディシノバは負の遺産が多く、早急な収益化が求められる状況です。

 

<参考文献>
Receptosの買収総額について(Celgene to buy Receptos for $7.2 billion; gains promising drug)
Receptosの財務状況について( SEC Filing 10-K Annual report for the fiscal year ending Wednesday, December 31, 2014)
Receptosの株価について(RCPT Historical Data)
メディシノバの財務状況について(2018年度有価証券報告書)

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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