メディシノバ 進行型多発性硬化症適応のMN-166フェーズ3治験について+導出額の推定

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メディシノバが本日公開したIR資料「MN-166(イブジラスト)の進行型多発性硬化症を適応とするフェーズ3臨床治験計画に関するお知らせ」について私の考えを述べたいと思います。なお、同IR資料の内容は治験のプロトコル(手順)ではなく、プロトコルを作成するための方針であることに留意が必要です。では、1つずつ見ていきましょう。

 

1.本フェーズ3臨床治験では、無再発二次性進行型 MS(再発を伴わない二次性進行型 MS)のみを対象に患者登録を行います。

理由としてMN-166(化合物名:イブジラスト)が進行型多発性硬化症の中でも無再発二次性進行型MSに対して顕著な効果が認められること、さらに同適応が進行型MSの大部分を占めるのに対し、既存薬が存在しないことを上げています。

図表1,2は以前の記事「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応の既存薬品とMN-166(イブジラスト)の優位性」で公開した資料ですが、ぜひ今一度ご確認下さい。

(図表1:MN-166の進行リスク減少度 作成:SKブログ)
(図表2:米国での多発性硬化症の患者区分 作成:SKブログ)

2.本フェーズ3臨床治験の主要評価項目は、FDAが同意した、EDSS(総合障害度評価スケール)で評価される、3か月持続する身体障害の進行リスクです。これは、近年承認された進行型MS適応の治療薬でのフェーズ3臨床治験と同じ主要評価項目です。

メディシノバは過去のMN-166のMS適応治験において、全脳萎縮の進行度を主要評価項目に上げてきました。

これは脳萎縮とMSの症状に関係性があるというこれまでの医学的根拠に基づいているものですが、フェーズ3では表面的に現れる病状に焦点を当てた主要評価項目となりました。

なお、参考までに図表3にて進行型MS治療既存薬とMN-166の2年間の脳萎縮の抑制度を示します。

(図表3:脳萎縮の抑制効果 – 2年間 作成:SKブログ)

3.当社は、フェーズ3臨床治験の実施回数を1回と予定しています。

臨床治験は承認までに得るべき主要評価項目が複数ある場合があります。この場合、登録患者の条件や人数に幅をもたせ複数の治験を行うことが必要になりますが、今回のメディシノバのケースでは上記1.の主要評価項目を達成さえすれば基本的にはFDAからの承認が得られるという意味合いでしょう。

 

以上を通して、メディシノバは費用対効果と成功率を掛け合わせた期待値が最も高い選択をしたように思われます。「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応の既存薬品とMN-166(イブジラスト)の優位性」で示された通り、MN-166には一次性進行型MSに対しても十分に競争力を持っています。

しかし既存薬Ocrevusに対する進行リスク減少度の優位性は若干のため、今回はあえて無再発二次性進行型MSに絞ったものと思われます。なお、将来的に一次性進行型MSに対するMN-166のフェーズ3治験が行われる可能性は十分にあると考えられます。

導出契約の観点から考察します。メディシノバは進行型MS適応のMN-166に対して、米国向けは自社開発、それ以外の地域に対する権利を導出すると明記しています(「資料:2018年12月期 第2四半期決算説明会」参照)。

これは同一地域において複数の化合物権利者が存在することを避けるためです。そのため、自社でのALS適応フェーズ3治験が開始される今、米国地域にて一次性進行型MS適応パイプラインを導出する可能性は低いと考えられます。

また導出に関する金銭内容についても触れたいと思います。仮にメディシノバが金銭的な理由で一次性進行型MS治験が行えないとする場合、導出総額は3,748,312,157USDと推定することが出来ます(図表4)。

これは多数の仮説により導き出されたもののため信頼度に疑問が残りますが、過去の記事「メディシノバ 進行型多発性硬化症適応パイプラインの導出額」で導き出した3,545,906,944USDに近い値となっています。

(図表4:導出額の推定 作成:SKブログ)

<設定値>
6年間の営業費用:156,396,000USD(メディシノバ 事業価値・企業価値・株主価値 – ポジティブシナリオ)
無再発SPMS治験費:31,019,608USD(= 11,300,000USD × 700人 / 255人 MN-166 の進行型多発性硬化症を適応とする共同臨床試験へのNeuroNEXT の治験研究費供与額確定のお知らせ )
契約一時金:5%(SANOFI, PRINCIPIA AGREE TO DEVELOP MULTIPLE SCLEROSIS DRUG CANDIDATE)

<参考文献>
脳萎縮抑制度:Mavenclad(Clinical Review Report:CLADRIBINE)
脳萎縮抑制度:Ocrevus、Mayzent、MN-166(メディシノバ:2017年12月期決算説明会)

<調査銘柄の概要>
4875 : メディシノバ / MNOV : MediciNova
住所 : (日本支社)東京都港区西新橋1-11-5-5F / (本社)4275 Executive Square, Suite 300, La Jolla, California
電話番号 : 03-3519-5010 / 1-858-373-1500
HP : https://medicinova.jp / https://medicinova.com

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