メディシノバ『NASDAQバイオテック企業の財務データを用いたメディシノバ株価の統計分析(相関分析:前編)』

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<当記事は2020年9月20日にSKメルマガで配信されたコンテンツです。>

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NASDAQバイオテック企業の財務データを用いた統計分析を行いメディシノバの現在の株価の適正さを計ります。

同分析の調査対象は2020年9月18日時点でNASDAQグローバルマーケットに上場するヘルスケアセクターのバイオテックに該当する企業とします。

上記条件はメディシノバと状況が類似する企業を抽出するためであり、グローバル製薬企業のように大きな売上を上げている企業は含まれず、該当するほとんどの企業がフリーCF(キャッシュフロー)がマイナスとなっています。

結果として143の企業が当分析の対象となりました(添付ファイル:NASDAQ-BioTech143.pdf)。

そして、統計分析を行う前にデータの全体像を掴みます。

メディシノバの時価総額の大きさは143社中86位と下位グループに落ち込んでいます。

その他項目(前年度結果)でのメディシノバの順位は、資産94位、負債7位、株主資本83位、事業CF17位、投資CF58位、財務CF98位、現金残高53位、フリーCF15位という結果です。

なお、負債は負債額が小さいほど上位となります。

事業CFと投資CFでは同CFがプラスとなっている企業を除くと事業CFが7位、投資CFが3位となります。

メディシノバの様な創薬ベンチャーは開発費や投資費がかさむため、事業CFと投資CFは大きくマイナスとなることが(開発が進んでいるという観点で)理想です。

さらに財務CFも98位となり、大きな資金調達がされておらず、CFの観点で開発の規模感に物足りなさを感じます。

財務データから読み解くメディシノバ株価の現状をまとめると、CFの観点での価値評価がなされていない(評価に値しない)ことが上げられます。

負債をネガティブに捉えられず、対して株主資本の割合もポジティブに捉えられないセクターであることを考えると、メディシノバの株価評価は専ら資産のみが組み込まれている可能性があります。

参考までに、メディシノバより資産が小さいにも関わらず時価総額が大きな企業は45社中13社存在し、その内事業CFがマイナスでメディシノバよりもマイナスが大きな企業は12社中11社です。

概要を掴んだところで統計解析に移ります。

まず、時価総額と財務項目の相関分析を行います。

相関分析とは、2つのデータの関係性の強さを数値化することで定量的に相互の関係性の有無ならびにその強さを分析する手法です。

相関係数は1に近づくほど正の相関(正比例)の関係が強くなり、-1に近づくと負の相関(反比例)の関係が強くなり、0に近づくほど無関係になります。

ここで問題となるのが数値化された指標(相関係数)がどの程度であれば2つの間に関係があるのかということです。

図表1は相関係数の信頼度を有意水準0.01、0.05、0.10と設定し解析したものです。

医薬品開発でもデータ数が多いほど開発の成功可能性が上がると言われていますが、その例と同じように相関分析でもデータ数が多いほど相関係数が低い値でも相関関係があると統計的に結論付けられます。

(図表1.データ数と相関係数 作成:SKメルマガ)

まずは143社全てを対象とする分析のため、データ数は143となり、それに該当する相関係数は2.10となります(有意水準 = 0.01 *信頼度を高めるため最も厳しい設定にします)。

図表2において時価総額および財務データの相関分析の結果を上げています。

(図表2.相関分析 N = 143  作成:SKメルマガ)

相関係数の絶対値が0.210より大きい組み合わせを青塗りしています。

結果として時価総額と相関関係がある項目は「資産」「事業CF」「財務CF」「現金残高」「フリーCF」となります。

「メディシノバの様な創薬ベンチャーは開発費や投資費がかさむため、事業CFと投資CFは大きくマイナスとなることが(開発が進んでいるという観点で)理想です。」と述べましたが、投資CFは時価総額に対して影響を与えないことが認められました。

また、資産と事業CFが時価総額と関係性が認められました。

この相反する二項目から考えられることは、資産があるだけでも、活発に事業資金を投下するだけでも時価総額を高めるには至らず、その両方ともを活性化することで時価総額を高めることが出来ると示唆しています。

補足として時価総額以外での目を引いた2項目に言及します。

まず、負債は時価総額と財務CFのみ相関関係がありませんでした。

企業価値評価の一説では「企業価値 = 時価総額 + 負債」としているものがあるなか、バイオテックではそれが成り立たないことが示唆されています。

そして、今回の相関分析で最もイレギュラーと思った項目が株主資本です。

バイオテック企業は投資家から集めたお金を事業へ投下しているため、「株主資本の増加」→「資産の増加(現金資産)」→「事業CFのマイナス増加」といった流れが出来ると思っていましたが、本分析結果はそれを否定しました。

当メルマガではまず概要とシンプルな相関分析結果に対して考察しました。

次回以降からより詳細で本格的な分析を進めていこうと思います。

 

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